コストコさん、うちにも来て! 激化する誘致合戦 出店ラッシュはいつまで続く?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
各地の自治体が、熱心にコストコを誘致している。どういった背景があるのか、各市町村の担当者に聞いた。モテモテ状態はいつまで続くのか。
山梨県に初出店
山梨県南アルプス市には、24年にコストコが出店する予定だ。山梨県初出店で、甲府盆地に加えて静岡県、長野県、東京都など県外からの集客を期待している。
今回は、コストコ単独ではなく、ヒカレヤマナシという地域活性化に取り組む特別目的会社(飲食業、高速道路のPAなどを運営するアルプスを代表企業に県内11社で設立)との共同での出店となる。ヒカレヤマナシは最大50店舗を集積した道の駅のような存在で、地域の農産物・特産物を販売したり、飲食店を運営したりする施設を営業する計画となっている。
立地は、中部横断自動車道の南アルプスICを出てすぐの南側、県道12号線を渡った場所となる。南アルプス市は22年7月に、コストコとヒカレヤマナシとの間で、南アルプスIC新産業拠点の事業者と認定する協定を結んだ。
実はこの場所には、かつて市が100%出資して設立した第3セクターの「南アルプス完熟農園」という観光施設があった。市はスモモのブランド「貴陽」をはじめ、果物の栽培が盛ん。
そこで、果樹園を6次産業化して、観光農園と果物、果物から作った食品などを販売、飲食する施設をつくれば、東京や静岡からの観光客に喜ばれるだろうと、15年にスタートした。
しかし、負債8億円を計上して7カ月であっけなく倒産。跡地の利用が決まらず、放置されていた。
現地は、11万1500平米の広大な敷地で、コストコは東側にできる。コストコの店舗面積は日本最大規模の1万5000平米の計画。駐車場は850台。最大500人の雇用が予定されており、そのうち52%が正社員。1日あたり5000人の利用が予定されている。ガソリンスタンド併設。
南アルプス市役所によれば、「直接誘致したのではなく、プロポーザー方式で応募してきた4件のプランの中から、コストコとヒカレヤマナシの共同提案を、審査会で採用した」とのこと。コストコとしても他の企業と組んで出店を行う、実験的な事例となる。
南アルプス市は、山梨県で唯一鉄道のない市で人口は約7万人。03年に中巨摩郡の6町村が合併して生まれた。商業の中心は、市役所の1キロほど北側、南アルプスICの2キロほど北東にある、桃園・小笠原地区。スーパーのトライアル、ザ・ビッグ、業務スーパー、ビジネスホテルのルートインとスーパーホテル、ホームセンターのケーヨーデイツー、衣料品のしまむら、100円ショップのダイソー、ドラッグストアのサンドラッグ、飲食店はマクドナルド、すき家、吉野家、KFC、かっぱ寿司など、徒歩でも回れる範囲で、ほぼ日常の生活に困らない店がそろっている。
しかし、隣の昭和町にイオンモール甲府昭和があり、買物客が流出していた。
実際に現地を訪れたが、現状は1日に1往復のみ、都内にあるバスタ新宿から南アルプスICを経由して身延方面へ高速バスが運行されている(南アルプスICを通らない市内と新宿を結ぶ高速バスは1日に5便ある)。ちょうどコストコ予定地の前に停留所があるので、大幅に増便する可能性がある。そうなると、東京都内から車を運転しなくても、アクセスできるので、日帰り観光に良さそうだ。晴れていれば、かなり近くに富士山が見える。
以前との違いは、21年に中部横断自動車道の山梨県と静岡市を結ぶ区間が、全線開通したことだ。ヒカレヤマナシの商業施設も含めて、集客は期待できるのではないだろうか。
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