百貨店は終焉か、あるいは復活か:なんとバブル越え(2/3 ページ)
われわれ世代が昔から感じていた、「特別なハレの場としての百貨店」というイメージは、もはやなくなってしまうのだろうか。
なんとバブル越え。百貨店のV字回復
ところが、誰もが百貨店は終わりと思っていたなか、伊勢丹の好調っぷりが報道された。
三越伊勢丹HDが5月9日に発表した2023年3月期連結決算によれば、高級ブランド品などの仕入れ相当額を含む総額売上高が1兆884億円(前期比19.3%増)と3年ぶりに1兆円台を回復。営業利益も前期比で約5倍となる296億円となり、コロナ禍前の2019年3月期を大きく上回った。旗艦店の伊勢丹新宿本店の売上高は3276億円とバブル期の1992年3月期以来、31年ぶりに過去最高を更新。バブルの象徴とまで言われたのだが、そのバブル期を超えたのだ。
コロナ前にも好調期はあったが、その頃は中国人を中心とした多くの観光客が、爆買いを繰り返し、ある種の特需が起きていた。しかし、今回の好決算は、それほど多くの訪日客でにぎわったことが原因ではない。また、日本人の来店者数も、コロナ前に完全に戻ってはいない。では誰が支えているのだろうか。
ここのところの好調っぷりを支えているのは、「外商」だという。
つまり、富裕層とのビジネスだ。コロナ禍でも日本の富裕層(野村総合研究所が定義する富裕層は金融資産1億円以上)は、確実に増加しているという。コロナ禍で、収入格差はさらに広がったと言われ、外国人の訪日数が減り、一般層の来店数も伸びないとなれば、生き残りをかけた戦略は、これしかないだろう。
外商部門は、まさにこの富裕層を相手にビジネスをしているのだが、絵画や芸術品から、ファッションのトップブランドまで幅広く商材を持つ百貨店にとっては、本来、得意中の得意なビジネスだ。来店数が2〜3割減ろうとも、売価が倍になればいいのだ。一億総中流時代での、「ひとつ上の暮らし」提案から、富裕層への本物の「一流の暮らし」の提案ができるのが、いまの百貨店外商ということなのだろう。
三越伊勢丹HDの今回の好決算は、富裕層対象ビジネスが、成功への第一歩を踏み出せたことを物語っている。この先は、間違いなく、この成功を足掛かりに、富裕層ターゲットのビジネスへと舵をきっていくのだろう。
関連記事
- 「アンナミラーズ」姿を消して1年、人気のパイはどうなったのか
米国発のレストラン「アンナミラーズ」が姿を消して、1年がたとうとしている。高輪店が閉店してから、運営会社はどんな手を打っているのだろうか。オンライン上で粛々と販売していて……。 - バーガーキングがまたやらかした なぜマクドナルドを“イジる”のか
バーガーキングがまたやらからしている。広告を使って、マクドナルドをイジっているのだ。過去をさかのぼると、バーガーキングは絶対王者マックを何度もイジっているわけだが、なぜこのような行動をとるのか。海外に目を向けても同じようなことをしていて……。 - 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.