「焼肉きんぐ」300店舗達成の衝撃 ライバルは苦戦しているのになぜ?:ロードサイドで成長(3/3 ページ)
「焼肉きんぐ」の勢いが止まらない。店舗数が増え続け、300店舗を突破している。ライバルが苦戦しているのになぜ好調を維持しているのか。
焼肉ポリスが取り締まる
店内では、従業員が専用のタスキをかけた「焼肉ポリス」として巡回している。焼肉ポリスは客の焼き方を取り締まるのが役割。間違った焼き方を注意してくれるほか、大きくて焼きづらい肉を切り分けてくれる。一人客や男性グループには厄介な感じも否めないが、ファミリー層には店員との接点の場として楽しめるのではないだろうか。
その他、集客施策の一環として公式アプリ内で「焼肉ポリス手帳」なるコンテンツを配信している。来客回数に応じて会員ランクが上がっていくシステムで、実際の警察と同じように巡査から警視総監までの10階級に分かれている。特定のランクに到達するとオリジナルグッズをもらえるようだ。
優良客を対象としたロイヤリティプログラムの一環として行われる会員ランクのシステムは、飲食店だけでなく他の業態でも見られる。スタンプカードのゴールや最上級ランクといった「目標」が近づくほど目標達成に向けたモチベーションが上がる消費者の心理傾向を「エンダウド・プログレス効果」と呼ぶ。
試しに会員になってみて1つでもランクが上がれば、さらにその上を目指す心理が働くようだ。焼肉ポリス手帳のような会員ランクシステムはエンダウド・プログレス効果を促し、コアなファンを生み出すのに役立っているとみられる。
初の都市型店舗も
焼肉きんぐの今後について、物語コーポレーションが掲げている方針を調べてみた。現在主力のロードサイド店については出店を継続しつつも新たな出店方針として都市型店舗の開拓を進めるようだ。22年5月には東京・浅草に初の都市型ビルイン店舗をオープンしている。従来型店舗より酒類メニューを3割増やしていることから、飲み会・宴会需要を狙っているとみられる。
また、インバウンドの回復も視野に入れているという。浅草店が成功すれば都市部での出店を強化するのであろう。実際に居酒屋チェーンの業績が回復しインバウンドも増えていることから都市型店舗は伸びる可能性がある。ただし、これまで得意としてきたロードサイド店よりも賃料は高く、客層もファミリー層とは異なる。新たにノウハウを蓄積する必要があるため一筋縄では行かないだろう。
著者プロフィール
山口伸
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー Twitter:@shin_yamaguchi_
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