「送料無料」はこのままだと“絶対”になくならない、歴史的な理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
ネットで買い物をする人にとって、常識となっている「送料無料」という言葉が消えるかもしれない。いわゆる「2024年問題」で、政府は物流の見直しを図っている。その流れの一環で、送料無料が問題視されているわけだが、本当になくなるのか。
100年前と同じことを継続
新聞やテレビに広告を出して、「分割払いの金利は当社が負担」とともに送料無料を大きく打ち出してきたのである。この70年代から隆盛を極めた「送料無料商法」が、令和の今もネット通販に形を変えて継続しているという流れだ。
そして、注目すべきは一度は「無料」の呪縛から逃れたはずの百貨店も、気がつくと再びこの商習慣に依存を始めるという点だ。表向きは配達無料という悪しき伝統を止めることはできたが、百貨店の通販サイトを見るといい。まだ、いろいろな形で送料無料を押し出している。形態やツールは変わったが、100年前と同じことを今も継続しているのだ。
さて、1904年から60年代までの配達無料、そして70年代から2020年代までの送料無料という流れを振り返ってみたわけだが、みなさんはこう感じたのではないか。
「なんか、延々と同じことを繰り返していない?」
そうなのだ、デパートと通販、デパートの配達員と宅配ドライバーという違いはあれど、われわれ日本人はおよそ50年スパンで同じビジネスモデルを繰り返している。同じような「タダで配達する人の負担増」という問題を起こして、同じような危機意識を抱く、という同じサイクルを忠実に「再現」しているのだ。
ということは、2回目にあたる今回も、前回と同じ結末になる。つまり、送料無料という表示が規制されたところで、それと入れ替わるような形で、新たな「タダでモノを運ぶサービス」が始まる。表現が若干マイナーチェンジされるだけで基本的には送料無料が継続していくのだ。例えば「送料負担ゼロ」とか「商品代オンリー」などだ。
物流業界の多重請負という構造も変わらない中で、こういう無料サービスが継続する限りは、宅配ドライバーの待遇や賃金も上がらないだろう。
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