「おにぎりせんべい」の認知度は、なぜ“西高東低”なのか:経済の「雑学」(2/3 ページ)
大阪の人にとって「おにぎりせんべいはソウルフード」と思われているかもしれないが、日本は広いものである。認知度を見ると、関東は50%ほど、東北にいたっては10%にとどまっている。なぜこのような「差」が生まれているのか。製造元のマスヤを取材したところ……。
西日本で売れて、東日本で苦戦して
さて、商品が誕生したのは69年である。スーパーなどで販売したところ、どのような反響があったのだろうか。マスヤの担当者に聞いたところ「ものすごく売れました。ただ、西日本では売れたものの、東日本では苦戦しまして。人気商品として定着できませんでした」という。
なぜ西日本で売れて、東日本で苦戦したのか。その理由を探っていくと「食文化の違い」が浮き彫りになってきた。関東はしょうゆを基本とした草加せんべい、東北は塩味が効いた南部せいべいがそれぞれ売れている。この2つの牙城を崩すために、同社は何度も何度も営業にチカラを入れたものの、そのたびに苦戦を強いられてきたのだ。
というわけで、関東や東北の人は近所のスーパーに足を運んでも、「おにぎりせんべい」を目にする機会が少なかった。買いたくても、買えない。いや、その存在すら知らない人が多かったのだ。
この話を聞いたとき、次の言葉が浮かんできた。「人間の味覚は、子ども時代にどんなものを食べてきたかで決まる」――。誰が最初に言い出したのかよく分からないが、日本マクドナルドの創業者、藤田田氏は「人間は12歳までに食べてきたものを一生食べ続ける」と語って、12歳以下の子どもたちをターゲットにハンバーガーを売ってきたというエピソードがある。
ということは「おにぎりせんべい」も、子どものころに食べる機会があれば、関東や東北での認知度が上がるのではないか。このような疑問がわいてきたので、担当者に聞いたところ、実は10年以上前からちょっとした取り組みを始めているという。
それは「4連おにぎりせんべい」の販売だ。
「4連おにぎりせんべい」の特徴は、せんべいのサイズがやや小さくて、食べきりサイズの4連包となっていること。このような話をしても「ふーん、それがどうしたの?」と思われたかもしれないが、この商品を出したところ、小さな子どもをもつ親の胃袋……ではなく、“心”をがっちりとつかんだのだ。
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