G-SHOCKの初代モデルは、なぜ40歳で“形状”を認められたのか:経済の「雑学」(3/3 ページ)
G-SHOCKの初代モデルが立体商標として登録されました。立体商標に登録されるのは狭き門として有名ですが、カシオ計算機はどのような手を打ってきたのでしょうか。取材したところ、意外なことが分かってきて……。
初代モデルにこだわる
今回の立体商標の件を調べていくうちに、ちょっと気になることが浮かんできました。なぜカシオは初代G-SHOCKのモデルをベースにした時計をいまも販売しているのでしょうか。このような話をすると、熱烈なファンから「なに言ってんだよ。分かってねえなあ」「このフォルムがいいんだよ」といった指摘が入りそうですが、デザインを批判しているわけではありません。
G-SHOCKは「落としても壊れない時計」という1行の企画書から開発がスタートしました。耐衝撃構造を備えた時計をつくることはできないか。当時の開発担当者はタフな性能を突き詰めた結果、四角い形状のフェイスとケースが特徴のスクエアモデルが完成しました。
ただ、その後、さまざまな方面で技術が進歩しました。ソーラー充電システムであったり、電波を受信したり、Bluetoothを使ってスマートフォンと連携したり。いずれもG-SHOCK初代モデルをベースにした時計に搭載しました。このほかにも新しい機能をたくさん詰め込んでいるわけですが、なぜ初代のデザインにこだわってきたのでしょうか。
歴代の開発メンバーは、このような話をしていたのかもしれません。「この部品はちょっと大きいなあ。初代モデルの形状に搭載するのは、無理無理。仕方がないから、サイズをちょっと大きくするか」と。このことを広報担当者に尋ねたところ、次のような答えが返ってきました。
「私も近くで見ていて、『時計のサイズを大きくしてもいいのでは?』と思ったことがありましたが、『その考えは間違っている』ことが分かってきました。部品が大きいからサイズを変えるのではなく、部品が大きくても、なんとか搭載する方法はないのか。開発メンバーは知恵を絞って、これまで新しい機能を搭載してきました」
この言葉の意味は深くて、これまでの開発メンバーは、タテで入らなければヨコにして、大きければ小さくして、小さければ大きくしてといったやりとりを繰り返してきたそうです。限られたスペースの中に「新しい技術を詰め込めば一丁あがり」といった世界ではなく、G-SHOCKの看板を背負っている以上、同時に落としても壊れにくいモノに仕上げなければいけません。
そんなことを40年も繰り返していくうちに、開発メンバーはどんなことを身に付けていったのでしょうか。答えは「〇〇力」。「うーん、分かんないや」といった人は、歴代モデルをじーっと見ていれば、じわじわ浮かんでくるのではないでしょうか。
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