「ビッグモーター」不正のウラに何があったのか 長年の“不文律”も一因か:高根英幸 「クルマのミライ」(4/6 ページ)
中古車の買取販売大手のビッグモーターが世間を大きく騒がせている。次々に不正が明らかになっているが、なぜこのようなことが起きたのか。中古車販売のビジネスモデルにも問題があって……。
オプションの保証制度が大きな利ざやになる理由
長期保証の契約を誘導される背景に、何があるのか。中古車の保証付販売が主流になってきたことによる弊害があるからと言ってもいい。保証修理をすべてのオーナーが利用するわけではないので、販売店はまず保証加入でもうかる。保証自体を保険会社に任せている場合は、手数料やキックバックが大きな利益になる。
これは日本車の信頼性が極めて高いことが背景にある。10年10万キロでもまだ十分に実用性を備えているくらい、耐久性と信頼性が高い日本車は、新車から5年程度はほとんどメンテナンスを必要としない。このことによってディーラーでのスピード車検が実現し、さらには手抜き点検による不正を招くことになったのは記憶に新しいところだ。
整備業者の中には、こうした信頼性の高さを悪用して手抜きの車検整備でユーザーや行政の目を欺(あざむ)いているところも少なからず存在する。ビッグモーターはその最大手だった、というワケなのである。
クルマを購入する気で販売店を訪れると、オプションなどで予算オーバーの金額を提示されても分割払いの支払い回数を伸ばすことで手が届いてしまうと、勢いで契約してしまうことも。そうしたセールストークに唆されて余計な費用を払わないようにしたい
こうした販売形態が表面化したことから、公正取引委員会も中古車販売に対する規制を改めた。従来は、本体価格が分からないことでクルマの価値が分かりにくいため、総額表示のみの販売(ポッキリ価格などと呼ばれる)は禁止されていた。
消費者には分かりにくいという意見が聞かれたことも理由の一つだが、購入時にあまりに車両本体と総額がかけ離れてしまうケースも見受けられるようになり、2023年10月からは支払い総額での表示が義務付けられることになったのだ。
これにより車両本体だけでなく、手数料や保証などのオプションで総額が膨れ上がる販売形態には、一定の制限が加えられることになる。中古車店の中には、別な方法で利益を上げる方法を考え始めているところもあることだろう。
ともあれ消費者はもう少しクルマという商品について、詳しくなる必要がある。何でも販売店にお任せという思考停止状態が、カモにされるリスクを高めているからだ。
諸費用の項目一つとっても、複雑で分かりにくい印象だが、理解しようとせず営業マンに丸投げでは、その分手数料を取られたり、余計な費用を計上されていることにも気付かなくなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なぜ「ビッグモーター」で不正が起きたのか レオパレスや大東建託との共通点
テレビCMでお馴染みのビッグモーターの不正が明らかになった。保険金を水増し請求するために、信じられない行為が行われていたわけだが、なぜ「買取台数日本一」の企業が不正を働いたのか。ビッグモーター、レオパレス、大東建託には共通点があって……。
マツダの「CX-5」はどうなるのか 思い切って刷新できない事情
「CX-5」が好調のマツダだが、根深い問題を抱えている。解決策として考えられる3つの選択肢と合わせて見ていこう。
なぜヘッドライトがまぶしく感じるクルマが増えているのか
夜間、クルマを走らせていて、対向車や後続車のヘッドライトがまぶしく感じることがある。その原因はどこにあるのか。大きくわけて3つあって……。
なぜSUVは売れているのか 「しばらく人気が続く」これだけの理由
街中でSUVをよく見かけるようになった。各社からさまざまなクルマが登場しているが、なぜ人気を集めているのだろうか。EV全盛時代になっても、SUV人気は続くのだろうか。
マツダCX-60は3.3Lもあるのに、なぜ驚異の燃費を叩き出すのか
マツダCX-60の販売状況が、なかなか好調のようだ。人気が高いのはディーゼルのマイルドハイブリッドと純ディーゼルで、どちらも3.3Lの直列6気筒エンジンを搭載している。それにしても、3.3Lもあるのに、なぜ燃費がよいのだろうか。