中国製BEVは今後どうなるか 避けられない現実:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)
深刻なバブル崩壊を迎えている中国では、2022年にBEVへの補助金が終了した。今後BEVを生産するメーカーの行方は。
バブルカーとベーシックカーのボーダーラインは何か
バブルカーとベーシックカーを分けるボーダーラインが何なのかについて、世に広く合意された明白な基準はないのだが、例えばこの4台(ミニ、2CV、Type1、500)に関しては、時速100キロ領域でも「危険ではない走行性能」を備えるだけではなく、乗り味に個性的な魅力があり、運転して楽しい。
「何なら大きいクルマではなく、これを積極的に選ぼうか」という気にさせるクルマでもある。筆者もまた一度ならず買いたくなったことがある。定量的な基準ではなくて申し訳ないが、クルマ好きから見れば、それは質的に明らかに違うものだといえる。
中国製BEVの議論をするときに、クルマ以下の代用品を全部ひっくるめるから評価が難しくなるのであって、そこに線引きをしっかりすれば見えてくるものがある。
日本の軽自動車は
日本の軽自動車はどちらに属するものだろうか? 日本人は軽自動車を軽視しがちであるが、「1円、1グラム、1ミリ」にこだわる開発を数十年にわたって行ってきた究極のクルマであることを忘れてはならない。
その証拠に欧州系のメーカートップが、来日のたびに軽自動車を集めて試乗したり、買って帰ったりしていることも、知っている人は知っているはずだ。ホンダの「トゥデイ」を参考にしてつくられたルノーの小型乗用車「ルノー・トゥインゴ」や、軽自動車を研究し尽くして発売された一連のフィアットの小型車など、その技術は専門家の間では極めて高く評価されているのだ。
中国製のバブルカーが軽自動車の領域に果たして届くことがあるかといえば、筆者は懐疑的である。このあたりも歴史を知っていれば容易に想像できる。
中国企業にすごみがあるとすれば、それは並外れたアニマルスピリットである。あらゆる場面でアンテナを張り、次にもうかるビジネスは何かをチェックし続ける。それは慎重な日本とは違う。日本の未来を憂う多くの危惧はそこから発生しているのだが、慎重であることの意味も理解すべきだ。
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