最低賃金引き上げ、11.2%の企業が「打つ手なし」 特に厳しい業種は?:東京商工リサーチ調べ
東京商工リサーチが、最低賃金引き上げに関する調査を実施した。最低賃金の上昇に何らかの対策を取ると回答した企業は61.0%だった一方、11.2%は「できる対策はない」と回答した。
厚生労働省の中央最低賃金審議会は7月28日、2023年度の地域別最低賃金額改定の目安についての答申を取りまとめた。目安額は前年度から41円上昇、全国加重平均で1002円となり、賃上げの動きが加速している。東京商工リサーチが調査したところ、最低賃金の上昇に何らかの対策を取ると回答した企業は61.0%だった一方、11.2%は「できる対策はない」と回答した。
同社は「企業の置かれた状況は二極化が進んでいて、全体で7割の企業が最低賃金上昇の影響に対応する必要に迫られていることが分かった」とコメントした。
どのような対策を実施している?
実施、または検討している対策としては「商品やサービスの価格に転嫁する」(36.3%)が最多となり、以下「設備投資を実施して生産性を向上させる」(23.4%)、「雇用人数を抑制する」(12.4%)と続いた。
規模別でみると、「雇用人数を抑制する」は中小企業が12.9%で、大企業(9.0%)を3.9ポイント上回った。また、「設備投資を抑制して財務負担を低減させる」は中小企業が7.1%に対し、大企業は4.1%と3.0ポイントの差があった。中小企業ほど、コストカットによる余剰資金で人件費を捻出せざる得ない状況がうかがえた。
最低賃金改定で許容できる上昇額は?
最低賃金の引き上げ幅は、21年度が平均28円、22年度が同31円、今年度が同41円だった。今年度の最低賃金を基準に、来年度許容できる最低賃金の引き上げ額について尋ねたところ、来年度に「50円以上」の上昇を許容できる企業は50.6%だった。また、15.9%が「許容できない(0円)」と回答した。
業種別でみると、「許容できない」と答えた業種で最多となったのは「農業」(41.6%)だった。以下「娯楽業」(38.4%)、「機械器具小売業」(37.9%)、「はん用機械器具製造業」(27.5%)と続いた。
東京商工リサーチは、「1〜7月に発生した人件費が高騰したことによる倒産は29件(前年同期0件)だった。物価高の影響もあり賃上げは企業の重要課題になっているが、業績が伴わない人件費上昇は経営に深刻な打撃を与えかねない。価格転嫁に向けたサポートや各種税の引き下げ、収益力を高めるための投資支援など、即効性のある対策が急務になっている」と指摘した。
調査は8月1〜8月9日、インターネットで実施した。有効回答数は4885社。資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
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