「顧客体験価値」が重要となった3つの理由
昨今「顧客体験価値」が重視されるようになった背景には、3つの理由があります。
まず1つ目は「顧客の商品・サービスへのタッチポイントが広がってきた」という点です。以前の購買行動は、主にマスメディアを通じた興味喚起→店舗で購入、というシンプルな流れを理解するのみで足りていました。
その後スマホ、SNSでの口コミ文化などの普及も相まって、顧客はいつでもどこでも商品やサービスを調べることが可能になりました。現代では、企業が用意したタッチポイント以外でも、商品やサービス、そのブランド自体への印象が形成されていくようになっています。
下記はそういった現代の購買モデルとしてGoogleが提唱したZMOT(Zero Moment of Truth)という概念です。店頭での購入を決める瞬間であるFMOT(First Moment of Truth)、商品を実際に利用する瞬間となるSMOT(Second Moment of Truth)というタッチポイントの前に、ZMOT(Zero Moment of Truth)、つまり店舗に行く前に人は情報収集を行っている(その情報収集が他の方のSMOTにより生み出された声である可能性がある)ことを示す考え方です。
こうして顧客の購買行動が一層複雑になりました。これに応じるために、顧客の体験全体を考慮したマーケティングが求められているのです。
2つ目は「多くの商品・サービスにおいて、市場が成熟期に入っている」という点です。
市場が成熟期に入ると、導入期などには効いていた、商品・サービスの「機能」、あるいはそれを使うことで気持ちが満たされるなどの「情緒」での差別化が厳しくなっていきます。そこで「体験」という別の軸で差別化する方向へとシフトしているのです。
最後3つ目は「ユーザーデータの定量的な把握が容易になっている」ということです。
ここまでを読んで、企業にとっては購買行動を自社の施策では制御しえない、難しい時代だと思うかもしれません。しかし、以前は見えなかったユーザーの行動を、CRM(顧客管理)ツールなども使い定量的に把握することが可能になったという点は、サービス・製品の提供側にとってプラスです。特に、既に顧客情報が存在し、再購入を意図したコミュニケーションも実行しやすい既存顧客へはアプローチがしやすく、注目が集まります。
上記3つを踏まえると、いまマーケターに必要とされているのは「顧客一人ひとりの生活の至るところ、ブランドに関する体験の全てに、関係醸成のチャンスがある」と考え、積極的にそのチャンスを生かすことです。
関連記事
- AIが東大合格への「最短ルート」を導き出す 戦い方が変わる「受験の今」
もっと効率的に勉強して「志望校に合格したい!」――。多くの受験生が抱く願いを、AIがかなえる。合格への「最短ルート」を導き出すというが、どんな仕組みなのか。 - 「ドンキの広告」平均売り上げ150%増 秘密は店舗とアプリの連携にアリ
「ドンキの広告」が好調だ。アプリと店舗でのデジタルサイネージで精度の高いターゲティング広告を展開。今後はファミマと連携し、さらなる効果拡大を目指す。 - 男梅サワー、塩分量変えずに「しょっぱく」 サッポロビールのAIシステムが“驚きの”提案
「サッポロ 男梅サワー 通のしょっぱ梅」は、通常よりもしょっぱさが増した商品だ。なのに、塩分量をほとんど変えていない。背景には、AIからの“驚きの”提案があった――。 - 「溶接の作業着」がキャンパーに爆売れ ワークマンが「エクセル研修」を強化して見えた新たなニーズとは
ワークマン好調の背景には「データ活用の強化」がある。作業服だけではなく、新業態を続々とオープンし、新規層を獲得。「エクセル研修」を強化して見えた新たなニーズとは? - 「50代だから緑茶を飲むわけではない」 コカ・コーラの自販機をネットにつないで分かった購買行動
コカ・コーラの公式スマートフォンアプリ「Coke ON」は、4200万ダウンロードを記録した。自販機DXを加速し、「飲み物を売るただの箱」から接客を伴う小売店に変化しているというが、どういうことなのだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.