処理水をめぐって“愛国サンドイッチ”の危険性 企業が「日本人」とうまく接する方法:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
日本のホテルや飲食店に、音声読み上げソフトを用いてこんな嫌がらせ電話がかかってきている。原発の処理水をめぐって、バッシングが起きているわけだが、中国ビジネスを展開していくうえで気をつけなければいけないことがある。それは日本人で……。
デマが流れたらすぐに事実を整理して反論
疑惑を追及する人たちは、日本端子が中国企業とつくった合弁会社の自己資本比率が高いのは「異例の厚遇」であって、これは河野ファミリーが中国共産党幹部とズブズブだからだと主張していた。ただ、同社と同じような資本比率は、石を投げれば当たるほどよくあるものだ。今どき米国の投資会社も中国では自己資本100%で会社がつくれる。
そこに加えて、「莫大な利権を貪っている」と言われていた太陽光パネル事業だが、そもそも日本端子は太陽光パネルをつくっていない。日本端子は1960年に設立してから、製品の8割は自動車用のコネクタや圧着端子で、顧客も日本の自動車メーカーが多い。Webサイトの画像で、先進的な技術があるというイメージ訴求のためソーラーパネルの画像を使ってしまっていたことで、誤解が広まったのだ。
しかし、こういう指摘をしてもネットやSNSでは「日本端子=中国共産党とズブズブ」という風評はなかなかなくならなかった。ちょっと取材をすれば、筆者が指摘したようなことはすぐ分かる。だからマスコミもこの「疑惑」をスルーしていただけなのに、「日本端子疑惑にマスコミが全く触れないのは、中国からの圧力だ」とか「ゴルゴ13」も真っ青の国際陰謀論を唱える人までいた。
それがようやく鎮火したのが、騒動からほどなくして日本端子が自社Webサイトで「お知らせ」として、これまで中国市場で太陽光発電の部品など販売したこともないと説明したことだった。
これを受けて、「日本端子と中国共産党の疑惑を徹底追及します!」と声高に叫んでいたジャーナリストの皆さんも「そんな話ありましたっけ?」みたいな感じになって、この疑惑、いやデマはフェードアウトしていったのである。
この騒動から、企業の危機管理担当者が学ぶべきは、デマが流れた時点で即座に、事実を整理して反論するということだ。
日本端子や取引先の自動車メーカーなどからすれば、ネットやSNSで指摘された「疑惑」は反論するのもバカらしいほどの話なので放置していた。B2B企業なので「実害」もないと思ったかもしれない。しかし、結果としてこれが「デマ」を広げてしまった。やはり企業のWebサイトで「火消し」をもっと早くすべきだった。
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