非現実的な規制で庶民のアシが消滅する:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)
法律でBEVの販売を義務付けられている今、Bセグメントのクルマは今後どうなるのか。自動車メーカー各社の取り組みは。
メーカーにとって“お荷物感”のあるセグメント
さて、ここからが本題だ。
日産は国内でマーチの販売を終了した。トヨタは一時期米国で売るヤリスをMAZDA2のOEMに切り替えていた。逆にマツダは欧州で売るMAZDA2をヤリスのOEMに置き換えた。三菱は、タイで生産して日本に輸入していたミラージュの国内販売を在庫限りで終える。一体Bセグメントに何が起きているのだろう?
Bセグメントは当然売価が安い。数が出る割にもうからない。その下には日本のAセグメントに当たる軽自動車が控えていて、こちらは全新車販売の40%を占める最量販車種である。Bセグが売れるといっても軽には全く敵わない。Bセグは、もともと自動車メーカーにとって、ある種の社会還元というか若干のお荷物感のあるセグメントでもあったのだ。
そこへBEVの販売比率を義務付ける規制が加わった。ご存じの通りBEVのビジネスは高いバッテリーの仕入れ価格に圧迫されて全くもうからない。利益を上げているのは、実質テスラのみ。BYDも政府の多方面にわたる援助の下駄がなければどうなるか分からない。
さて、BEVはもうからないのに、ZEV規制やCAFE規制に代表される各国の法律に販売台数や比率を強制されて、何がなんでも売らなくてはならない(参照リンク)。未達なら厳しい罰金が待っているからだ。その結果、自動車メーカーは利益を確保するのが極めて難しくなりつつある。
一例として挙げれば、フォードは、23年の第1四半期決算の年間見通しで、BEV事業を原因とする年間4000億円近い赤字を見込むことになった。
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