非現実的な規制で庶民のアシが消滅する:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)
法律でBEVの販売を義務付けられている今、Bセグメントのクルマは今後どうなるのか。自動車メーカー各社の取り組みは。
BEV事業を慎重に進めてきた日本の自動車メーカー
日本の自動車メーカーは、ここ数年「出遅れだ」とか「やる気がない」と猛烈な批判を浴びながらも、BEV事業への取り組みを、マーケットの吸収力にシンクロさせるべく慎重に進めてきたので、赤字見込みのようなことにはなっていないが、それでも利益の確保についてはかなり神経を尖らせているのも事実だ。
トヨタはBEVの利益率低下を埋めるためにハイブリッド(HEV)の原価低減を進め、第5世代トヨタ・ハイブリッド・システム(THS)の製造原価を初代の6分の1まで下げた結果、もはや内燃機関車(ICE)よりHEVの方が利益率が高くなった。そのHEVを主に北米で売ることで、原価負けするBEVを売っても赤字にならない体制を作り上げつつある。
日産も同じくHEVのe-POWERシリーズの原価低減に取り組んでいるし、マツダは「直6FR」のラージプラットフォームで商品を上方にシフトして利益率を増加させつつ、その原資でBEVをカバーしていく戦略を取る。あるいは日産のe-POWERと同じく、シリーズ型HEVとなるロータリーEVもまたBEVをカバーする役割を期待されていると思う。
という必死のバランス取りの中で、戦局が厳しいBEVとBセグメントの二正面作戦はどこも避けたい。それを力押しでやり切るつもりでいるのはトヨタだけだ。Bセグだけで何台あるのか。ベーシックモデルで、ヤリス、ヤリスクロス、アクア。役物としてはレクサス版ヤリスクロスのLBX、モータースポーツ系のGRヤリス。しかもAセグにパッソとライズに加えてルーミーまである。
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