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なぜ「半額ショップ」はイマイチなのに、絶対王者オーケーは伸びているのか 「安売り」の手法に違い小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)

最近「半額ショップ」という新しい業態の小売チェーンが各地で勃興している。値上げが相次ぐこのご時世、多くの消費者の支持を得られるかと思いきや苦戦気味だ。そこにはある盲点があった。

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公取委から指摘を受けたオーケー

 ただ、規模の拡大による交渉力の強さは両刃の剣でもある。8月10日、オーケーは公正取引委員会からの指摘に基づいて、是正措置を発表した。オーケーは地域一番の安値を実現するため、競合店の価格より高い場合「競合店に対抗して値下げしました」のPOPをつけて値下げすることを公約しているが、その際、一部取引先に補填を要請していたことが指摘され、今後そうした補填を取りやめることにした、という内容であった。

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オーケーのリリース(公式Webサイトより引用)

 規模の利益というのは商習慣としておかしいことではないのだが、その力に依存するようになると、こうした行き過ぎた取引が発生するのは過去の事例からも想像に難くない。業界有数の存在となったオーケーは、あらためてコンプライアンスの徹底により、自らの力を正しく制御していく必要があるということだろう。

 オーケーは、ナショナルブランドの地域最安値を維持し続けること、コスパが分かりにくい生鮮に関してはオネストカード(安くしている理由を正直に説明したPOP)で訳アリの内容を明らかにすること、値上げを事前に告知することなど、さまざまな説明努力を丁寧に行ってきた。商品情報を開示することで、コスパを判断できるスーパーとして消費者の信頼を得て、業界屈指の企業に成長したのだ。

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オネストカード(公式Webサイトより引用)

 そのオーケーが、消費者に説明できない理由で値下げ原資の確保するという行動は、これまでの方向性から乖離している。規模の利益を享受可能な規模にまで成長したオーケーは、自らの力が関係者に与える影響力についてあらためて認識して行動する必要があるだろう。

 また、規模の利益が生み出す低価格とは取引先からの利益の移転であって、企業としてのイノベーションでもない。コスパを軸とした独特のビジネスモデルで成長してきたオーケーも、踊り場が訪れているのかもしれない。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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