拡大続くドンキ帝国 「長崎屋」「ユニー」買収で限界突破できたといえるワケ:小売・流通アナリストの視点(1/3 ページ)
ドン・キホーテを中心とした小売グループであるPPIHが、目覚ましい躍進を続けている。この30年における日本の小売業で最も成長した企業といってもいいだろう。PPIHが国内屈指の売上規模にまで成長した背景には何があるのだろうか。
ドン・キホーテを中心とした小売グループであるパン・パシフィックインターナショナルホールディングス(以下、PPIH)が、目覚ましい躍進を続けている。デロイトトーマツグループが公表している2023年世界の小売業ランキングでもセブン&アイホールディングス(15位)、イオン(17位)、ファーストリテイリング(57位)に続いて、78位と世界トップ100の小売業となった。この30年における日本の小売業で最も成長した企業といってもいいだろう。
図表1は03年度、12年度、22年度の小売業売上ベスト10の顔ぶれを並べたものだが、03年には売り上げ1500億円ほどで67位だったPPIHは、12年度には約5000億円で15位に、そして22年度では1.8兆円で国内4位となっている。日本を代表する小売業の一角を占めるようになったPPIHは、今や街のディスカウントストアにはとどまらない存在感を放つようになった。
PPIH、急成長の背景
PPIHが国内屈指の売上規模にまで成長した背景は、総合スーパー(以下、GMS)をグループで自社運営するようになったことが大きい。GMSとはイオン、イトーヨーカ堂に代表される食品から衣料品、雑貨類まで、消費者が生活する上で必要なあらゆる商品をワンストップショッピングできるように品ぞろえした多層階の大型スーパーであり、誰でも一度は行ったことがあるような店である。
しかし、この業態は今世紀に入ってさまざまな専門店チェーンが台頭するようになってからは振るわず、構造不況業態であるとまでいわれてきた。生活雑貨はドラッグストア、ホームセンター、100円ショップ、衣料品はユニクロ、しまむら、靴はABCマート、ベビー用品は西松屋、家具インテリアはニトリなどなど、商品ジャンルごとの専門店チェーンがそこかしこにある今、GMSの品ぞろえは中途半端だと消費者から敬遠される存在になってしまったのである。
ウリであったワンストップショッピングにしても、ちょっと郊外にあるショッピングモールに行けば、各種専門店がよりどりみどりの状態であり、GMSが特別便利な訳でもなくなった。こうした環境変化によって、かつて小売の王者として君臨していたGMSは今やその数を減らしつつあるというのが現状で、この20年ほどの間に、ニチイ、長崎屋、ダイエー、西友など多くのGMSが再編の波に飲み込まれた。そうした中で1社、長崎屋を傘下に入れて企業として再生することに成功したのがPPIH(当時のドン・キホーテ)である。
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