「1杯1000円超え」でも絶好調な椿屋珈琲 ルノアールとの違い、コメダとの意外な共通点:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
「椿屋珈琲」を運営する東和フードサービスが、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げている。同店でのコーヒー1杯の価格は1000円を超えるが、物価高騰で消費者の節約志向が高まる中でも客足を増やし続けられるのはなぜなのか。そのワケを、ルノアールやコメダ珈琲の戦略と比較しながら見ていこう。
都市部を歩くと、多種多様なカフェが目に入るが、中でもひときわ異彩を放つのが「椿屋珈琲」だ。運営会社の東和フードサービス(東京都港区)は、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げている。
一般的なカフェとは一線を画し、同店でのコーヒー1杯の価格は1000円を超える。物価高騰によって外食でも節約を意識する消費者は増えていると考えられるが、なぜ高価格帯路線で客足を増やし続けられるのだろうか。そのワケを、ルノアールやコメダ珈琲の戦略と比較しながら見ていこう。
なぜ、1000円超のコーヒーが売れるのか
1日に発表された同社の月次売上高は前期比で27.9%、客数20%増と大幅な伸びが見られる。同社は好調な客足について喫茶需要が高まったことに加えてアフターコロナの需要回復も好調な業績を支えていると分析しているが、注目すべきは客単価も前期比で107.0%と伸びていることだろう。
単純に猛暑を避けるためであれば、なるべく安い商品で涼む顧客が増加するはずだが、付加価値の高い商品の提供にも成功しているということは単純に猛暑だけが好調の理由とは言いがたい。
そんな椿屋珈琲を運営する東和フードサービスの2024年4月期第1四半期決算を確認していこう。同社の第1四半期における売上高は30億2400万円と、前年同期比で18%増加しており、営業利益は2億5100万円と同117%増となっている。
訪日外国人観光客にウケる訳
椿屋珈琲の業績が拡大してきた理由として、外国人観光客の増加は見逃せないだろう。日本では特にアジア圏からの訪問者が増えており、彼らが求めるのは日本独特の文化や体験であることが多い。1000円超えのコーヒーと聞くと驚きを隠せないが、1ドル150円に近い円安を考えると、7ドル程度で飲めるコーヒーは訪日外国人観光客にとってそこまで高くは映らないのだ。
Googleにおける検索回数の推移が確認できるGoogle Trendsのデータによれば、椿屋珈琲に関する全世界の検索ボリュームは過去最高クラスにまで上昇しており、コロナ禍前の水準を大きく上回っている。
近年、日本への訪日外国人観光客の数は増加傾向にあり、椿屋珈琲もその恩恵を受けている。高級志向のアジア系観光客を中心に、本物の日本のカフェ文化を体験したいという需要が高まっている。彼らにとって椿屋珈琲は、日本ならではの高級感と洗練されたサービスを提供する場所として、非常に魅力的に映っているようだ。
実際に、椿屋珈琲を運営する東和フードサービスの中期経営計画では、自社の強みとして椿屋珈琲のブランディングとインバウンド需要の取り込みという点を挙げている。店内はレトロモダンな和風の要素も多い。椿屋珈琲は、高いサービス品質や洗練された店内でグローバルなスタンダードを保ちつつも、日本の文化や風情を感じられる。これが訪日観光客にも受け入れられる理由だろう。
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