沖縄・名護は「素通り観光」をどう克服? 「新テーマパーク計画」ともう一つの秘策:”やんばる”の取り組みを追う(3/5 ページ)
沖縄県名護市では、スマートシティ化を推進する上での基本計画となる「名護モデルマスタープラン」を22年度に策定。23年1月には一般社団法人「名護スマートシティ推進協議会」(以下、推進協議会)が設立され、同年5月には市と包括連携協定を結び、具体的な取り組み内容の検討が始まっている。その具体的な中身とは――。
WGごとで課題検討 観光では「情報発信」をより魅力的に
冒頭でも市が抱える課題に触れたが、当事者はどう考えているのか――。推進協議会の林代表理事はスマートシティ化を進める背景についてこう語る。
「名護市は名桜大学や沖縄工業高等専門学校もあり、北部12市町村の中でも人口減少はそこまで進んでいません。しかし、今後を考えれば高齢化が進みますし、観光においては通過点になってしまっています。北部地域の世界遺産登録など環境の変化もあります。全国的にスマートシティ構想やDX化が進む中、名護市でも最新技術などで解決できる問題は少なくないと考えています」(林氏)
協議会は会員制のコンソーシアムを組織し、課題ごとにワーキンググループ(WG)を運営する。社員企業がそれぞれの事業内容とリンクしたWGの幹事を務め、市の担当課とも連携しながら課題解決策の検討、実証を推進していく。
では、現状でどのようなアプローチが考えられるのか。例えば、沖縄では多くの市町村で課題の一つに挙がる観光振興。
沖縄では今、観光客数がコロナ禍以前の水準に急激に戻っているが、コロナ禍で業界を離れた人が多く、人手不足が深刻化している。それは名護市も例外ではない。厳しい状況下でも機会損失を防ぎ、観光客に「素通り」される状況を打破するため、テクノロジーを駆使していかに効果的な情報発信をしていくかが重要になる。
ただ、「発信」においては課題が顕在化している。林氏は、観光の情報発信では、旅マエ、旅ナカ、旅アトというフェーズに区切って施策を考えることが多いと説明する。例えば、旅マエにはどこに魅力的な観光地があるかを知らせ、旅ナカでは交通手段や目的地の混雑状況などを分かりやすく発信。旅アトにはまた来てもらえるよう定期的に情報を発信する――といった形だ。
しかし、現段階ではそれぞれのサービスを各企業が個別に展開し、旅行者が複数のアプリを使い分ける状況が生まれている。その状況を踏まえ、観光WGではある取り組みを検討している。
「それらの情報を集約して効果的に発信する仕組みを、コンソーシアムの会員企業が保有するサービスやテクノロジーを組み合わせて実現できれば、より満足度の高い観光コンテンツを提供できると考えています。例えば、観光客が必要な情報のみを適切なタイミングで配信する、その人に合った内容にカスタマイズができるなどです」(林氏)
当然、各事業者は利益を追求するため競争関係にあるが、中長期的な視点に立てば名護市の魅力を発信し、多くの人を呼び込むことが各事業者の利益にとってもプラスになる。協議会を中心に協力関係を築き、共に発展を目指す世界観を描いているわけだ。
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