沖縄・名護は「素通り観光」をどう克服? 「新テーマパーク計画」ともう一つの秘策:”やんばる”の取り組みを追う(4/5 ページ)
沖縄県名護市では、スマートシティ化を推進する上での基本計画となる「名護モデルマスタープラン」を22年度に策定。23年1月には一般社団法人「名護スマートシティ推進協議会」(以下、推進協議会)が設立され、同年5月には市と包括連携協定を結び、具体的な取り組み内容の検討が始まっている。その具体的な中身とは――。
テーマパークで人が急増? デジタルによる対応策とは
観光については、先述のように新たなテーマパークが25年前後に開業する予定だ。この計画は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復させたことでその手腕が高く評価されている森岡毅氏がCEOを務める刀(大阪市)が主導しており、沖縄観光に強烈なインパクトを与える事業として期待されている。
ただ、地元にとっては懸念事項があるのも事実だ。「観光地化されるほど『観光公害』のリスクも増えてくる」と林氏は説明する。
「例えば、本部町にあるフクギ並木の周辺は住宅街ですが、パワースポットとして人気を集め、観光客が住宅の敷地内に入ってしまう問題が実際に起きています。テーマパークができると当然人の流れが増え、交通問題が出てくる可能性もあります」(林氏)
車社会の沖縄ではすでに交通渋滞が各地で社会課題化しており、集客力のある新しい施設ができることでさらに悪化する恐れがある。また観光の快適性という観点から見てもマイナス要素になり得る。
協議会としては、人的データを活用した交通のシミュレーションなどを行い、名護市と適切な交通施策を検討するEBPM(Evidence Based Policy Making)を推進する他、市民とのWSを通した交通の課題抽出やあるべき姿の検討などを行う予定だ。
その中でも具体的な解決策の一つとして検討しているのが「MaaS(マース:Mobility as a Service)」と呼ばれるサービスである。バスやタクシーなどの公共交通などを最適に組み合わせて検索、予約、決済などを一括で行うものだ。
「移動手段の確認や混雑状況の把握、さらには決済まで完了できるようなサービス展開も考えられます。観光や交通だけでなく、多様な領域を横断した課題解決策が求められているので、会員企業と連携して実証実験やサービス開発を行い、地元の人や観光客が気軽に利用できるようになればと考えています」(中村氏)
中村氏がこうイメージを語るように、利便性を高めて車以外での移動を促し、交通量を減らすことは地元民にとっても、観光客にとってもメリットがある。
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