沖縄・名護は「素通り観光」をどう克服? 「新テーマパーク計画」ともう一つの秘策:”やんばる”の取り組みを追う(5/5 ページ)
沖縄県名護市では、スマートシティ化を推進する上での基本計画となる「名護モデルマスタープラン」を22年度に策定。23年1月には一般社団法人「名護スマートシティ推進協議会」(以下、推進協議会)が設立され、同年5月には市と包括連携協定を結び、具体的な取り組み内容の検討が始まっている。その具体的な中身とは――。
スマートシティを加速させる「オープンイノベーションセンター」も開設
地元住民の生活と共存しながら、発想の転換や新しい技術を応用して人と企業を呼び込むことを狙うスマートシティ化。時間をかけて住民を巻き込んだまちづくりを進める必要がある。
これからのまちづくりに欠かせない「持続的、自発的かつ自由なまちづくりへの参画の場」として、KPMGが23年5月に開設したのがープンイノベーションセンター「Nago Acceleration Garage」だ。約100人を収容できる。
協議会が活動の拠点としている名護産業支援センターに設けられた施設は、一見するとコワーキングスペースのようだがそうではない。まちの活性化をリードする未来思考の“人財”を育成・輩出し、構想の推進を加速化するために設けられた専用施設である。
大型モニターやAIロボットなどを常設し、さまざまな設備を活用しながら企業や行政、学生らが集まっていつでも課題の解決策や新規事業のディスカッションをできるようにした“実験室”のような施設だ。
7月下旬にはWG活動のキックオフイベントが開かれ、約100人の参加者で賑わった。今後もセミナーやワークショップを積極的に企画していく予定だ。既に県内外の自治体や企業の視察も相次いでおり、まちづくりのひとつのランドマークとして注目を集めている。
中村氏は「課題解決のための事業を起こす、起業家マインドは全国的にも重要視されていますが、名護市もそういう人たちがまちづくりを担っていくことが重要です。海外の巨大IT企業が、最初は小さなガレージでのディスカッションから出来上がっていったように、私たちもこのガレージを拠点にそれぞれの知見を集め、構想を進めていきたいです」と展望を語る。
変わりゆく周辺環境やさまざまな地域課題と向き合いながら、人や企業によるハーモニーで新たな価値を創造し、理想とする「響鳴都市」に生まれ変わることができるか――。
日本最南端の県である沖縄から、他県にとってモデルとなるスマートシティ化の取り組みを全国に鳴り響かせてほしい。
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