ウォルマートが「広告代理店」になる日 小売りに頼らない未来の稼ぎ方(1/4 ページ)
売上総利益率は70〜80%、ロスも生じず、返品される可能性もゼロ――。ウォルマートが将来を約束された、最強の売れ筋商品とは。
流通最大手チェーンのウォルマートには、将来を約束された売れ筋商品があります。成長が著しいだけでなく、売上総利益率も70〜80%となるものです。しかも、気をつけていれば、お客からクレームもほぼ発生しないうえ、返品される可能性もゼロ。
犯罪集団などによる略奪や盗難・万引きに遭うこともなく、ロスも生じない。安価な偽物も出回らず、競合他社に安売りされる心配もありません。しかもこの売り物は、日本の大手チェーンストアにも近い将来、必ず波及します。
一体、どんな商品か分かりますか?
それはチェーンストア最大手にとって稼ぎ頭となり、安心・安全の鉄壁でもある「広告」です。小売企業による広告事業「リテールメディア」への関心が高まる中、ウォルマートは今、リテールメディアとしてはまさにパワーハウスとなっています。なぜなら、すさまじい来客数をリアル店舗やオンラインに持っているからです。
リテールメディアに注力することで、ビジネスモデル自体を大きく変えつつあるウォルマートの現状を探っていきましょう。
著者プロフィール:後藤文俊(ごとう・ふみとし)
流通コンサルタント。
35年近い在米生活に基づき、米国の流通業に視察に訪れる経営者や企業を支援している。
公式Webサイト「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」では日々、米国小売業の最新情報を発信している。
ウォルマートが自社ビジネスを“再定義”した真意
ウォルマートの実店舗、Webサイト、アプリ全てを合わせた1週間の平均客数は1.39億人にも上り、日本の人口を超えています。ウォルマートの国内の店舗数は、傘下の会員制スーパー、サムズクラブを除いて4700店近くもあります。5000坪を超える24時間営業のスーパーセンターは7月31日時点で3560店もあります。
オンライン販売を行うウォルマート・コムやウォルマート・アプリの利用者数は不明ですが、サードパーティの業者が出店するマーケットプレイスには直近で4億品以上もそろえているため、オンライン客もすさまじい数になるのは容易に想像がつきます。
ウォルマートは実際、今年の年次報告書に自分たちのビジネスを「オムニチャネルリテーラー」と再定義しているのです。リアル店舗やオンラインで来客数が多いと、顧客が目にしたり、触れたりするタッチポイントも膨大な数となります。
テレビ離れやラジオ離れが進む中、確実に集客しているウォルマートは、顧客との接点を広告媒体にできます。店舗に設置されたデジタル・サイネージだけでなく、家電売り場に並べられているテレビの画面、拡大しているセルフチェックアウトレジ、さらにはネットスーパーでのカスタマージャーニーにも広告を忍ばせることが可能なのです。
例えば、ネットスーパーなどのEコマース展開では、ネット通販最大手アマゾンが行っているように、検索結果の上位にスポンサード広告を並べられます。ネットスーパーなら顧客が注文した商品で店内在庫が切れている場合、代替品の選択肢として、スポンサード商品を含ませることも考えられます。
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