看板「500円ランチ」が消滅? さくら水産、知られざる「高級シフト」の今:敵は「磯丸水産」だけではなかった(1/3 ページ)
かつて「500円ランチ」や安価な海鮮メニューを武器に人気を博した「さくら水産」。ピーク時には約150店舗を展開していたが、現在は20店舗ほどにとどまる。そんなさくら水産が、意外な変貌を遂げていた。
「さくら水産」といえば、1人2000円程度で満足に飲み食いできる安い居酒屋のイメージを持つ読者も多いことだろう。実は近年、低価格路線から脱却し、質にこだわった海産物居酒屋としてリニューアルを進めている。
299円のフライドポテトのような安い料理は姿を消し、看板メニューでもあった500円ランチも廃止されたようだ。現在では500円以下で食べられる料理は少なく、チェーン居酒屋の中ではやや高価格帯のメニュー構成となっている。なぜ方針転換をしたのだろうか。新旧さくら水産の違いと、低価格路線をやめた背景について解説する。
200〜300円台の刺身を武器に、ピーク時は約150店舗を展開
さくら水産は、テラケン(東京都千代田区)が1995年に第1号店をオープンした海産物居酒屋である。想定客単価は2000円であり、安い居酒屋チェーンの代表的存在として認識され、学生や男性会社員を中心に人気を集めてきた。一時期は刺身を200〜300円台で提供していたこともある。その後、2010年には東京・近畿を中心に約150店舗を展開するまでに至った。
しかし、その後は規模縮小に転じる。15年に国内PEファンド・アスパラントグループ(東京都港区)がテラケンを買収した際は、約100店舗にまで落ち込んでいる。16年2月期から18年2月期まで、テラケンの売上高は75.7億円→59.7億円→52.3億円と推移しており、アスパラントの傘下でも経営再建は果たせなかったようだ。
その後、19年5月にゆば・豆腐料理レストラン「梅の花」を展開する梅の花(福岡県久留米市)がテラケンを買収したが、コロナ禍に突入したことで業績はさらに悪化。23年4月末時点で、さくら水産の店舗数はわずか22店舗しかない。ちなみに梅の花はテラケンを買収した理由として「仕入れ時のシナジー効果」を挙げている。さくら水産が持つ契約漁港・卸売市場とのコネクションを中心とした仕入れ能力を手に入れることが目的であったと考えられる。
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