看板「500円ランチ」が消滅? さくら水産、知られざる「高級シフト」の今:敵は「磯丸水産」だけではなかった(2/3 ページ)
かつて「500円ランチ」や安価な海鮮メニューを武器に人気を博した「さくら水産」。ピーク時には約150店舗を展開していたが、現在は20店舗ほどにとどまる。そんなさくら水産が、意外な変貌を遂げていた。
新旧メニューを比較すると、違いが見えてくる
梅の花による買収後、さくら水産のイメージチェンジが進められ、かつてのような安い居酒屋という印象はなくなっている。新旧「さくら水産」のメニューを比較してみよう。
買収前の18年秋冬メニューでは「しゃかしゃかポテトフライ」が299円、「さば塩焼き」が349円、「生まぐろ刺し」や「生サーモン刺し」などの刺身類も399円に設定されるなど、いかにも安い居酒屋といった印象がある。角ハイやウーロンハイなどのドリンク類を平日の早い時間帯限定で99円とするキャンペーンも行っていたようだ(いずれも税別)。
一方、23年9月現在のメニュー構成は全く異なる。新宿西口店の場合、居酒屋では安価なメニューとして定番の「フライドポテト」が430円で、「するめいか炙り焼き」は980円、「本日の刺身盛り合わせ(5種)」は1490円となっている。かつて税抜499円だった寿司5貫セットも現在では830円にまで値上げされている。生ビールの中ジョッキは600円、生搾りレモンサワーは460円とドリンク類も決して安い印象はない(いずれも税込)。ピザやチキンカツといった旧メニューで見られた海鮮以外の料理はかなり限定的で、高品質の海産物に特化している印象がある。
かつてのさくら水産といえば、ごはん、味噌汁、そして卵までもがお替わりし放題の「500円ランチ」も看板メニューの一つだった。平日のランチタイムには会社員をよく見かけたものである。現在でもご飯お替わりし放題のランチを提供しているが、価格帯は1000円前後と、こちらも値上げされている。
「磯丸水産」の台頭が大きな脅威に
しかし、消費者にとってうれしいはずの低価格路線を進めながら、なぜさくら水産の店舗数は減少してしまったのだろうか。業績悪化に転じた要因の一つとして「磯丸水産」の台頭が考えられる。
磯丸水産は東京・大阪の駅前一等地という立地戦略を基本とし、09年に第1号店をオープン。以降も店舗数は伸び続け、17年2月期には150店舗を超えた。磯丸水産は、24時間営業で昼夜問わず売り上げを確保することで一等地のコストを補い、居酒屋業界の中でも高い利益率を確保していたことで知られる。一等地の集客力が強みとなり、10年ごろにピークを迎えていた、さくら水産の認知度が磯丸水産に取って代わった印象がある。
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