復活のロータリー 「ROTARY-EV」で、マツダは何をつくったのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
今回登場した「MX-30 ROTARY-EV e-SKYACTIV R-EV」 を端的に説明すれば、メカニズム的には2021年に発売された「MX-30 EV MODEL」のモーター/発電機と同軸に、発電専用ワンローターロータリーエンジンを追加したものだ。
少なめバッテリーのBEVにコンパクトなレンジエクステンダーを組み合わせる」ことのポテンシャル
さて、ではこのR-EVは買いかどうか? 正直な話、家に充電設備がない人はどうやっても向かない。とにかくこれを買うならば、普通充電器の保有は絶対条件である。そして、そこの条件が合うのであれば、かなりおすすめできると今筆者は思っている。一応まだ試乗していない段階の話としてはそういうことだ。
そして「ウチに充電器がない俺はどうしたらいいんだ」という人には、誠に申し訳ないがこのシリーズはちょっと厳しい。誰にでも勧められるCX-5がベターである。じゃなきゃロードスターだ。
そうそう。さっきマツダのシステムがトヨタTHSに勝ったと書いたが、自宅に充電器がないとなると話が逆転する。その条件だったら、THSの圧勝である。何しろ充電できない条件でのエンジンメインのHEVとして長らく王座にいたシステムなのだから。
ただ、今回の「少なめバッテリーのBEVにコンパクトなレンジエクステンダーを組み合わせる」という製品はかなりのポテンシャルを感じるのも本当で、日本より海外で注目されるような気がする。マツダらしくよく考えられたところが多く、一方で普通の人には分かりにくい。そこが吉と出るか凶と出るか、そろそろ追い風が吹いてもいい頃だと思うのだが。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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