EC化率「45%の中国」と「13%の日本」 3倍超の差がつく納得の理由:がっかりしないDX 小売業の新時代(2/4 ページ)
大手の食品小売業ではここ数年、1万坪級に及ぶネットスーパー専用の大型配送センターを開設する動きが顕著になっています。海外には、ネットスーパー専用の大型センターやEC運営の先行事例があります。国内の小売企業がEC運営を成功させるために、海外の事例から押さえておくべきポイントを探ります。
ネットスーパーの5つの形態と特徴
在庫の活用方針でネットスーパーを分類すると以下の5つになります。
(1)店舗活用型ネットスーパー
連載第3回「売り場をムダに歩き回る店員……店舗出荷型ネットスーパーの成功に必要な4つの視点」で書いたように、店舗活用型のネットスーパーは、既存の実店舗を活用してオンラインの注文を受け付ける形態です。固定費は比較的安く抑えられますが、ピックアップ(商品を拾い集める作業)人件費や配送費用が大きいため変動費は大きくなります。このモデルでは、店舗の協力が不可欠です。宅配エリアは店舗の位置に依存するため、比較的狭い範囲に限られます。
(2)ダークストア
ダークストアは、一般の顧客には開放されていないネット販売専用の店舗です。在庫管理が正確で、ピックアップ効率が高いのが特徴です。実店舗の運営にかかるコストを削減し、オンライン販売に特化することで、効率的な運営が可能です。
一方、実店舗と違い、認知を獲得することが難しく軌道に乗るのに時間がかかります。
(3)ダークストア併設型
ダークストア併設型は、店舗活用型の進化系とも言えます。実店舗とダークストアを併設(もしくは近隣に設置)し、より効率的な運営を目指します。これにより、実店舗の負担を軽減しつつ、オンラインでの販売効率も向上させることが可能です。
(4)物流センター型
センター型は、大規模な物流センターから直接商品を顧客に配送する形態です。大量の出荷に対応でき、大規模な運営が可能ですが、受注が少ない場合、初期投資の回収が難しくなる可能性があります。
(5)配送拠点ハイブリッド型
配送拠点ハイブリッド型は、受注の状況を分析して、物流センターからの出荷を基本としつつ、必要に応じて近隣店舗からの出荷も行う形態です。これにより、効率と柔軟性を両立させ、顧客への迅速な対応が可能になります。
これらの形態は、それぞれのネットスーパーの運営規模や戦略に応じて選ばれます。例えば、既存の店舗網を生かしたい場合、店舗活用型が選ばれることが多いですし、大規模にオンライン販売を展開したい場合は、物流センター型やハイブリッド型が選ばれることがあります。
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