EC化率「45%の中国」と「13%の日本」 3倍超の差がつく納得の理由:がっかりしないDX 小売業の新時代(4/4 ページ)
大手の食品小売業ではここ数年、1万坪級に及ぶネットスーパー専用の大型配送センターを開設する動きが顕著になっています。海外には、ネットスーパー専用の大型センターやEC運営の先行事例があります。国内の小売企業がEC運営を成功させるために、海外の事例から押さえておくべきポイントを探ります。
中国の先進企業から学べること
日本とは背景が異なるとはいえ、運営効率という点では参考になります。
中国2位のEC企業である京東(ジンドン、JD)のネットスーパー事業である京東到家は、15年ごろまでは全て実店舗売り場の在庫から注文をピックアップして配送する仕組みでしたが、近年では商品のピックアップおよび配送効率を最適化するために、注文数と売場面積で倉庫設計を変えています。
1日あたりの注文数が300以下かつ売り場面積が500平方メートル以上ある場合は、全て売り場からピックアップする。それ以下の売り場面積の店では、売り場からのピックアップを行わずダークストアを利用する。
1日あたり300〜1500注文で売り場面積が3000平方メートル以上の場合は、売れ筋商品は店舗の倉庫もしくはダークストアから、それ以外の商品は売り場からピックアップする。1日3000注文以上の場合はロボットなどで自動化された物流センター型のスマート倉庫から出荷する――という具合です。
注文数と売り場面積に基づいて倉庫戦略を最適化することは、日本のネットスーパーが学ぶべきポイントです。大型センター展開後の柔軟な戦略・戦術変更が、各社にとって必要になってくるでしょう。
ここで実店舗とオンラインサービスの連携を強化することが焦点になります。顧客の購買傾向に応じた柔軟な商品ピックアップ手法の採用は、効率だけでなく、顧客満足の向上にもつながるのです。
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