相次ぐ“ジャニーズ離れ” 起死回生のために「企業としてすべきこと」(4/4 ページ)
性加害問題を認めたジャニーズ事務所。これにより、大手企業を中心にジャニーズ所属タレントを起用した広告の中止や更新見送りが相次いでいる。「タレントに罪はない」ものの、なぜこのような対応が相次ぐのか。ジャニーズ事務所がとるべき対応や、これまで事務所にお世話になってきた広告主の企業ができる対応とは何か。危機管理に詳しい新田龍氏が解説する。
広告主企業ができること
同時に、これまでジャニーズタレントを起用した広告を活用して収益をあげてきた広告主企業側としては、今横並びで責任逃れのように契約解除、取引停止して傍観するのではなく、これからの「解体的出直し」を支援する働きもまた求められるところだ。
もちろん企業側は当事者ではないが「事務所がどのように変革できれば、将来的な取引再開が可能となるのか」といった指針を示し、被害者救済や再発防止策が適切に実行されるよう継続的に要請することはできるはず。
製造業の企業が、海外の協力会社や原料調達の過程で不当な人権弾圧がなされていないかチェックをするように、取引先において人権侵害がないか継続的な点検、調査を実施し、人権リスクを防止することを「人権デューデリジェンス」という。本来は製造業に限らず、全業種の全取引先に対して行う必要があるものだ。
欧州を中心に義務化が進んでおり、取り組みが不十分と判断された場合には経営リスクにもなり得る。わが国の国際競争力向上のためにも、今般のような出来事を機に、取り組みを推進していくことが望まれる。
ジャニーズ事務所の崩壊を防ぐには
企業不祥事や労働問題に詳しい、アクト法律事務所の安田隆彦弁護士はこのように語る。
「結論的に、ジャニーズ事務所は新田氏(筆者)が主張するようなラディカルな方策を取らないと国際的に通用しないでしょう、ジャニーズの名称も使用を止め、会社としても解散などして、名称も違う別会社に所属しているタレントを移籍し、タレントらへの被害の拡大を食い止めるべきでしょう。
特に欧米では若年者(児童も含む)への性的虐待への批判は極めて厳しく、もっとも卑劣な唾棄すべき行為で、この点の認識が日本では非常に甘い実態があります。マスコミ、芸能界の認識も甘すぎます」
ジャニーズ事務所は、広告主企業への説明責任を担うと同時に、被害者救済の実行を迅速に行わなければ、崩壊に向けて進みかねない。取引再開のためには、社名変更、経営陣や株主構成の刷新など解体的出直しも不可避であろう。
はたして10月2日、事務所は納得のいく改革案を示すことができるだろうか。
著者プロフィール・新田龍(にったりょう)
働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役
早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。「労働環境改善による業績および従業員エンゲージメント向上支援」「ビジネスと労務関連のトラブル解決支援」「炎上予防とレピュテーション改善支援」を手掛ける。各種メディアで労働問題、ハラスメント、炎上トラブルについてコメント。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。
著書に『ワタミの失敗〜「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』(KADOKAWA)、『問題社員の正しい辞めさせ方』(リチェンジ)他多数。最新刊『炎上回避マニュアル』(徳間書店)、最新監修書『令和版 新社会人が本当に知りたいビジネスマナー大全』(KADOKAWA)発売中。
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