「シン・ナウシカ」「実写版 トトロ」! ジブリ子会社化でありうるか:スピン経済の歩き方(1/7 ページ)
あのスタジオジブリが日本テレビの完全子会社になる。「これでジブリはアニメ制作に専念できる」といった声が出ているが、本当にそうなのか。企業買収の世界は……。
先日、日本のエンタメ産業の未来を左右する大きなニュースが入ってきた。あのスタジオジブリが日本テレビの完全子会社になるというのだ。
社長の鈴木敏夫氏によれば、天才アニメ作家・宮崎駿の「後継者」を育成できなかったなどの問題があり、話し合いを重ねて以下のような結論になったという。
「この先やっていくときに、やっぱり個人ではなくて、大きな会社の力を借りないと、やっぱりうまくいかないのではないか。そうしないと、ジブリで働いている人たちも安心して働けない」(記者会見での鈴木氏コメント)
世界に誇るような高い技術を持つ日本の町工場が後継者を育てられずに「個人商店」から脱却できず、大企業の傘下に入るという日本全国で起きている現象が、アニメ産業の最高峰でも起きてしまったことに、やるせないものを感じている人も多いのではないか。
その一方で、マスコミ報道では日テレグループ入りを歓迎する声も多いという。
『スタジオジブリ 日テレの子会社化』ネットでは好意的な声「素晴らしい作品を世に送り出してほしい』(中日スポーツ 23年9月21日)
記事を書いているのが、ジブリパークを共同運営している「中日新聞社」というのがやや気になるものの、確かにこういう考え方もあるのは事実だ。「企業経営」というめんどくさいことは、すべて日テレから派遣される取締役に任せて、ジブリはこれまで通りにアニメ制作に集中して、三鷹の森ジブリ美術館(以下、ジブリ美術館)、ジブリパークの運営に専念できるので、かえってよかったのではないかというのだ。実際、両社が発表した「想定されるシナジー」には、そのようなメリットが強調されている。
関連記事
- 「ディズニー誘致」の歴史に“地上の星”がいた! 何者か
ディズニーランドが開業40周年を迎えたことで、誘致成功に導いた人々があらためて注目されている。オリエンタルランドの初代社長など、さまざまな人物にスポットが当たっているが、筆者の窪田氏はある人物に注目している。何者かというと……。 - 日テレのスタジオジブリ子会社化 「Hulu」逆襲の一手になるか
日テレがスタジオジブリを子会社化したと発表。ネット上では早くも、日テレ系の動画配信サービス「Hulu」での作品配信に期待の声が高まっており、今回の買収は、同サービスの逆襲の一手になる可能性がある。 - 日本テレビ、スタジオジブリ子会社化 背景に後継者問題
日本テレビは『となりのトトロ』などの製作元として知られるスタジオジブリを子会社化したと発表した。宮崎駿氏など創業メンバーの高齢化が進む中、スタジオジブリが日テレ傘下入りを決めた背景には後継者問題があるという。 - 「君たちはどう生きるか」大成功で急浮上する、広告の必要・不要論
宮崎駿監督作品『君たちはどう生きるか』が好調だ。公開日を迎えるまで、ほとんど全く事前情報を明らかにせず、広告も展開しなかった。ここでにわかに浮上するのは、「広告は不要なのではないか」という議論だ。なぜ同作品は成功したのか、類似した事例を踏まえながら解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.