コラム
「君たちはどう生きるか」大成功で急浮上する、広告の必要・不要論:「宣伝ナシ」で勝つには(1/2 ページ)
宮崎駿監督作品『君たちはどう生きるか』が好調だ。公開日を迎えるまで、ほとんど全く事前情報を明らかにせず、広告も展開しなかった。ここでにわかに浮上するのは、「広告は不要なのではないか」という議論だ。なぜ同作品は成功したのか、類似した事例を踏まえながら解説する。
スタジオジブリの宮崎駿監督(崎はたつさき)が10年ぶりに監督作品として手掛けた映画『君たちはどう生きるか』は、従来の映画宣伝における手法を根底から覆し、異例の好スタートを切った。
映画配給大手の東宝が7月18日に発表したところによると、同作品の初動4日間における興行収入は21億4000万円、観客動員は135万人を記録したという。
これは宮崎監督の前作『風立ちぬ』の興行収入対比で150%を超え、01年公開の『千と千尋の神隠し』における初動4日間の興行収入、19億5437万円をも上回る記録だ。
映画のようなエンタメコンテンツにおいて、作品を興行として成功させるために広告宣伝は必要不可欠だと考えられてきた。
それなのに、なぜ私たちはこの映画の存在を知ることができたのだろうか? 広告はもはや不要なのだろうか。
関連記事
- スラムダンクの“聖地”は今――インバウンド殺到も、鎌倉市が素直に喜べないワケ
江ノ島電鉄(通称:江ノ電)のとある踏切は、アニメ版『SLAM DUNK』に登場する有名な「聖地巡礼」スポットだ。現在上映中の『THE FIRST SLAM DUNK』の人気で、世の中ではにわかに「SLAM DUNK熱」が再燃している。インバウンド需要も戻ってきている中、あの聖地は今どうなっているのか。現地へ向かった。 - 「水星の魔女」効果すさまじく? バンナムHDが史上最高売上、”1兆円企業”へ王手
「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の人気ぶりがすさまじい。最新話が放送されると毎回といっていいほどTwitterのトレンドに名を連ねるほどの人気ぶりだ。その効果もあってか、ガンダムシリーズのIPを保有する運営会社のバンダイナムコも業績がうなぎのぼりとなっている。 - 苦境のジブリ美術館、クラファンなぜ伸びない? 去年は5000万円→今年は300万円しか集まらず
「三鷹の森ジブリ美術館」への寄付金額が伸び悩んでいる。コロナ禍の入館制限で収入が大幅に減少し、建物を所有する三鷹市は、持続可能な運営を支援するため、ふるさと納税の制度を活用したクラウドファンディング(寄付の募集)を10月から始めたが、目標の2000万円にはほど遠く、わずか300万円しか集まっていない。昨年の1回目の募金では、目標を大きく上回る5千万円近い寄付が集まったにもかかわらず、なぜ今回は振るわないのか。 - 「なぁぜなぁぜ」TikTokでの大流行は、経営学的に必然といえるワケ
TikTokで流行中のフレーズ「なぁぜなぁぜ」。経営学的な視点からひもとくと、「トヨタ自動車」や「ソニー」といった世界的企業の成功パターンといくつか共通点がある。 - 日本のアパレルが30年間払わなかった「デジタル戦略コスト」の代償
「DX」という言葉に踊らされていないだろうか? テクノロジーの急速な進化はアパレル業界全体に不可逆な変化をもたらしている一方で、本質を欠いた戦略で失敗する企業は後を絶たない。アパレル業界における「PLM」もその一例だ。本連載では国内外の最新テック事例を“アパレル再生請負人”河合拓の目線で解き明かし、読者の「次の一手」のヒントを提供する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.