「サードプレイス」今は昔? 米スターバックスが「ピックアップ店」を増やすワケ(2/3 ページ)
米スターバックスが米国内で「ピックアップオンリーストア」を増やしている。スタバは自宅とも職場とも異なる、第3のリラックスできる場所「サードプレイス」としての機能をアピールし、ブランドを確立してきた。ブランドイメージとは相反するピックアップ・オンリー店舗を広げる狙いとは――。
「くつろげる場所」よりスピード重視
最近、ドライブスルーにおいて、スターバックスはアプリを介したモバイルオーダー注文でピックアップする顧客に「スキャンレス・ペイ」(Scanless Pay)の実証実験を行っています。スキャンレス・ペイとはスマートフォンのGPS機能によりドライブスルーレーンに並んでいる顧客の位置を把握することで、QRコードをスキャンしなくても顧客を特定して注文品を渡せる機能です。
ドライブスルーに並んだドライバーは、スマートフォンを取り出し、アプリを起動したり、QRコードを表示したりしなくても名前を伝えるだけで商品を受け取れるのです。スターバックスにとってはQRコードをスキャンする必要がなくなることでドライブスルーの待ち時間を短縮でき、多くの顧客をさばけるようになります。
スキャンレス・ペイの使い方は対象となるスターバックス店でモバイル注文しておき、受け取る直前でアプリからチェックイン(Check-in)します。チェックインすることでスターバックスが全地球測位システムにより顧客の位置をフォローできるのです。あとはドライブスルーの窓口で顧客が名前を伝えるだけで注文品を受け取れます。
ピックアップオンリーや空港内ピックアップ、ドライブスルー店やスキャンレス・ペイの事例からも分かるように、「くつろげる場所」というよりスピード重視なのです。実際、スターバックスは一部の店舗に高性能コーヒーメーカー「サイレンシステム」(Siren System)を導入し、グランド・モカ・フラペチーノなどの調理時間を大幅に短縮させています。
「アマゾン・ゴー」とコラボした新業態もオープン
ところで、スターバックスは2021年11月、ニューヨーク市内にレジなしコンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」(Amazon Go)とコラボした新業態をオープンしました。テスト展開となる「スターバックス・ピックアップ・ウィズ・アマゾン・ゴー」(Starbuck Pickup with Amazon Go)は、マンハッタン・ミッドタウンの59丁目沿いでパーク・アベニューとレキシントン・アベニューの間にあります。
入り口から左側にスターバックス・ピックアップのカウンターがあり、その横にはレジなし決済システム「ジャスト・ウォークアウト」(Just Walk Out)ゲートがあるのです。ジャスト・ウォークアウトのゲートではアマゾン・アプリのインストア・コードからQRコードを表示させスキャンします。もしくは生体認証の「アマゾン・ワン」(Amazon One)に事前登録しておけば手のひらをかざすことでゲートが開く仕様になっています。
スターバックス・ピックアップ・ウィズ・アマゾンゴー1号店。入り口から左側にスターバックス・ピックアップのカウンターがあり、その横にはレジなし決済システム「ジャスト・ウォークアウト」ゲートがある。カウンターにはピックアップを待つコーヒーが並べられており利用者の多さが際立っている
またゲートでクレジットカードを挿し込むことで、アマゾンのアカウントがなくても入店できるようになっています。
ゲートを通るとサラダやサンドイッチ、スナック類が置かれているアマゾン・ゴーのエリアが広がり、イートインスペースにはテーブルや椅子があります。飲み物はスターバックスのアプリを介して注文しながら、食べ物はジャスト・ウォークアウトを通ってレジなしです。
関連記事
- 巨大な店舗で「ダラダラ仕事」 それでも米国小売業が成長できるワケ
なぜ、巨大な店で従業員がダラダラ働いている米国の大手小売業が、キビキビ働いている日本の小売業より生産性が高く成長し続けているのか――長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。 - ECで買って店舗で受け取り ウォルマートが導入し話題の「新たな購買体験」とは
ECで購入した商品を店舗で受け取るBOPIS。米小売大手ウォルマートが先駆けて導入し、日本の小売業でも注目を集めています。今回は、9月に筆者が小売視察で訪れた米ニューヨークのBOPISの最新動向を紹介します。 - ウォルマートが「広告代理店」になる日 小売りに頼らない未来の稼ぎ方
売上総利益率は70〜80%、ロスも生じず、返品される可能性もゼロ――。ウォルマートが将来を約束された、最強の売れ筋商品とは。 - 米当局、“悪質UI”のアマゾン提訴 ユーザーだます「ダークパターン」なぜ生まれる?
ECサービスなどでユーザーを故意に迷わせたり、誤って購入させたりする「ダークパターン」。6月、米連邦取引委員会がアマゾンを提訴し大きな話題になった。ダークパターンはなぜ生まれるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.