コンビニ業界、収益は好調だけど……決算で「売上」ばかりに注目してはいけないワケ:ファミマの決算を例に挙げて(2/2 ページ)
コンビニ各社が人流回復の波を受け、売り上げを伸ばしている。しかし、決算で収益ばかりに注目するのは危険なのではないか、と専門家は語る。
ファミマ 売り上げ増に向けた商品面の工夫
もちろん、ファミリーマート単体で見れば、客数は前年と比較して増加傾向にあり、客数伸び率は102.7%だった。しかし、先述した通り客の絶対数はコロナ前と比較して減っている。今、売り上げを伸ばすための戦略として、商品面では「二極化」がキーワードになると渡辺氏。
「商品戦略においては、コロナ前から消費の二極化が変わらず、付加価値のついたちょっとぜいたくな商品が売れています。高価格帯のおにぎりやデザートなどの販売がコンビニ全体で好調で、ファミマもその波に乗っています」
一方で、昨今のコスト高の影響でファミマは「おにぎりなどの商品は、より安い方に手が伸びている印象がある」とコメントしている。
「ファミマは節約志向の高まりに対して、PB商品であるファミマルの商品の品ぞろえを強化。ファミマルは22年連続で前年比超えの成長を達成しています。今後も商品の二極化は維持しつつ、各商品を適切な価格で販売することが重要となるでしょう」
直営店急増のファミマ FCビジネスはどうなる?
ファミマの直営店比率で気になる動向があると渡辺氏。
2023年8月末の直営店店舗数は769店で、2020年2月末の306店と比較して2倍以上に増加している。
「サークルKサンクスのオーナーの契約更新が進まなかったため、契約未更新や中途解約分がほぼそのまま直営化された事などが推測されます。
直近では全店に占める直営店割合が4.65%(769店/16524店)となっています。ローソンは1.48%、SEJは1.25%ですので、圧倒的に高い比率です。
直営化により日販は伸長する可能性もありますが、チャージ収入の減少や本部経費増などによって既にいろいろと影響が出てきているかもしれません」
人手不足にテクノロジーの一手
今後の課題について、ファミマは決算発表時に「人手不足」を挙げた。「外国人スタッフが少しずつ戻ってきているが、全体的にスタッフが足りていない状態」と説明し、人材不足解消に向けてさまざまな取り組みを講じる予定だ。
「ファミマは現状、人手不足の切り札であるセルフレジにおいては、他社と比較して一歩も二歩も遅れています。しかし、逆に考えると、最新のモノが今後導入される可能性が高く、期待が持てる企業となります。
コンビニのレジ接客の悩みとなる宅配便やフリマ、ネット商品の発送や受け取りなど、サービスを超えて対応できるファミロッカーを10月16日から随時展開。飲料陳列ロボも導入するなど、セルフレジ以外の人手不足対策は最先端で、今後の進化が期待出来そうです」(渡辺氏)
話を聞いた人:渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト。流通ジャーナリスト。コンビニ評論家。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は講演会業務を中心に、商品開発・営業・マーケティング顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『Live News α』レギュラーコメンテーター、TOKYO FM『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。
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