消えた「和民」が鳴り物入りで大復活 ワタミが本気で仕掛ける新ブランドは、何がすごいのか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
コロナ禍で居酒屋ブランド「和民」から焼肉業態へと転換を図ってきたワタミ。ここにきて、居酒屋へ回帰する動きを見せている。なぜなのか。
ワタミは10月5日、東京都品川区の大井町駅東口に、次世代総合居酒屋の新ブランド「和民のこだわりのれん街」をオープンした。コロナ禍で他業態への転換を行い消滅した創業ブランド「和民」が復活した形だ。
これまで和民の名を冠する国内の業態は「焼肉の和民」のみとなっていたが、サントリーグループからの提案を受けて、祖業である居酒屋を見直したという。居酒屋の新たな価値を問う趣旨で、和民ブランドとして総合居酒屋を再構築した。この場所には、2021年12月にオープンした「こだわりのれん街」という業態が存在していたが、それをブラッシュアップする形で「ワタミらしさ」をより前面に出した。
和民のこだわりのれん街は、1階と2階がある。宴会用座敷席も合わせると、席数は230席。和洋中の多彩なメニューがある一方で、冷凍品を主体にした簡便な調理を見直したという。渡邉美樹会長兼社長は「お昼の12時から午後4時まで行っていた仕込みを復活させるなど、もう一度原点に返って店内の手作りにこだわる」と話す。
また、従来和民の顧客単価は2800円だったが、これを3200円にまで引き上げる。「これからは間違いなくインフレの時代になっていく。単価を上げていくことにより、賃金を上げたい」(渡邉氏)。物価が継続的に下がる、デフレの時代を生き抜いて成長してきたワタミにとって、発想を転換した物価高への挑戦となる店舗だ。
さらにサステナブルな取り組みも行う。ワタミは02年から有機農業に参入。23年10月時点で全国7カ所に「ワタミファーム」を展開し、管理面積532ヘクタール(およそ東京ドーム115個分)の広さを誇る。今や日本最大級の有機農業事業者だ。和民のこだわりのれん街では、ワタミファームで栽培した有機野菜を使ったメニューの提供をはじめ、SDGsを意識した取り組みを実現。ワタミでしか実現できない飲食体験をアピールしている。
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