消えた「和民」が鳴り物入りで大復活 ワタミが本気で仕掛ける新ブランドは、何がすごいのか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
コロナ禍で居酒屋ブランド「和民」から焼肉業態へと転換を図ってきたワタミ。ここにきて、居酒屋へ回帰する動きを見せている。なぜなのか。
コロナ禍の経験を基にした独自の出店スタイル
実際に訪問してみると、従来の屋台村やフードコート、あるいは昨今話題の横丁型商業施設とは異なる仕組みになっていることが分かる。7つの店舗が別々にあって、共用スペースが設けられている形ではない。つまり、7つの専門性が高い仮想飲食店が、1つのキッチンをシェアする格好で和民のこだわりのれん街は成立している。注文用のタブレット上にバーチャルな7つの専門店が存在し、店名をクリックするとメニューが出現する形だ。一見すると、オープンキッチンを備えた1店の居酒屋のようにも感じる。
このようなスタイルを取り入れた背景として、コロナ禍の最中に集客力を上げるため、複数の業態が1つの飲食スペースを共有するダブルブランド・トリプルブランドの店舗が増えたことが挙げられる。すかいらーくホールディングスのファミレス「ガスト」は、もれなく唐揚げブランド「から好し」を併設するようになった。松屋フーズホールディングスでは、牛めし「松屋」・とんかつ「松のや」・カレー「マイカリー食堂」のうち2ブランド併設店が増え、中には3ブランドを併設する店もある。
コロナ以前からあったものでは、ガーデン(東京都新宿区)が展開する、丼業態「情熱のすためしどんどん」、家系ラーメン「壱角家」、ステーキ「ステーキの王様」、ハンバーグ「鉄板王国」は同じビル内に階をまたいで展開されているケースをよく見掛ける。ハンバーガーの「ウェンディーズ」と「ファーストキッチン」は、同業2業態併設の「ウェンディーズ・ファーストキッチン」として人気が出て、店舗数も拡大している。
また、デリバリー専門のゴーストレストランでは、厨房は1カ所ながら、いくつもの業態の店が「ウーバーイーツ」や「出前館」の注文用のWebサイト上に存在するケースが多い。和民のこだわりのれん街は、こうしたゴーストレストランの手法をリアル店舗に応用したともいえるだろう。和民のこだわりのれん街の提案は、近年流行した業態複合に関する試みの一つなのだ。多種多彩な業態を開発してきたワタミだからこそ可能な、大手外食企業の総合力を生かした新総合居酒屋の提案といえよう。
それにしても、なぜ今、総合居酒屋なのか。ワタミは居酒屋から焼肉に、業態転換を進めていたのではなかったか。
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