なぜ「スイカゲーム」は大流行したのか 「作業ゲー」がバズる2つの要因:廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(1/3 ページ)
200万ダウンロードを突破するなど、SNSを中心に大流行している「スイカゲーム」。筆者は「このような作業ゲーがなぜバズっているのか?」と疑心暗鬼だったが、いまはスイカの生産に躍起になっている。何がプレイヤーのモチベーションとなっているのだろうか。
今年の夏ほどスイカを意識した夏はない。と言っても食べるわけでなく、作ることにである。SNSを中心に大流行している「スイカゲーム」のことだ。サクランボやブドウ、モモなど画面上にランダムに現れるフルーツを空っぽの容器のなかに順番に落とし、同じ種類同士を組み合わせながら、より大きなフルーツの生成・高得点の獲得を目指す。
このゲームの目的はズバリ「スイカをつくること」。登場するフルーツを順番に組み合わせていくと、最終的にスイカにたどり着く。プレイヤーはいかにしてスイカを生成するかに注力すればいい、という極めてシンプルなゲームなのだが、Nintendo Switchの2023年9月の月間ダウンロードソフトランキングで1位に浮上。10月5日にはダウンロード数が100万、23日には200万に達するなど大注目されている。20日には海外向けの配信も始まり、米国のニンテンドーeショップでは、ダウンロード専用タイトルとしてランキング1位となった。
筆者も話題に乗るために、手に取ってみたものの、「このような作業ゲー(作業ゲーム)がなんでバズっているんだ?」と疑心暗鬼だった。しかし、今では「スイカを作るまで寝れない」と自身のタスクのようになっており、スイカの“生産”に躍起になっている。SNSではスイカ中毒なる言葉も散見されるが、何がプレイヤーのモチベーションとなっているのだろうか。
なぜ、人々の心をつかんだのか 2つ要因
スイカゲームは、スマートプロジェクターを製造販売するpopIn(現在はAladdin X)が21年にリリースした。18年に発売したプロジェクター付きシーリングライト「popIn Aladdin」のコンテンツの一つという位置付けだった。
popIn Aladdinで配信されるコンテンツの多くは子供向けだ。就寝前、親子のコミュニケーションに使ってもらうことを狙っていて、スイカゲームもそのようなコンテンツの一つだったようだ。その後、21年12月にはNintendo Switch向けをリリースしたが、大きな話題にはならなかった。
今年になって、そんなスイカゲームに光が当たり始めた。ゲーム実況者やYouTuberがこぞってプレイを始め、一時YouTubeのゲームカテゴリーが「スイカゲーム」のプレイ動画であふれた。そうした動画の切り抜きがSNSに投稿され、普段ゲーム配信やYouTuberと縁がないユーザーにも届き、広く認知されていったようだ。
では、なぜ、ここまで人々の心をつかんだのだろうか。筆者は「サクッと感」と「非再現性」が要因にあると考えている。
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