「恋愛リアリティーショー」戦国時代 ブームを支えるのは緻密な「体験設計」:グッドパッチとUXの話をしようか(1/3 ページ)
「恋愛リアリティーショー」ブームが起きています。先駆けは1999年に放送開始した「あいのり」でした。そこから現在に至るまでさまざまな恋愛リアリティーショーが生まれています。ここまでのブームを引き起こした裏には何があるのでしょうか?
連載:グッドパッチとUXの話をしようか
「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。
『バチェラー・ジャパン』『あいの里』『今日、好きになりました。』――動画配信サービスを中心に、数々の番組が生まれている「恋愛リアリティーショー」。皆さんも視聴したことはなくとも、CMなどでタイトルくらいは聞いたことがあるでしょう。
今やその人気は「恋リア」という略称が生まれるくらいに定着し、次々と新コンテンツが生まれる「戦国時代」といわれています。
一人の独身男性の心を勝ち取るために独身女性がバトルを繰り広げる『バチェラー・ジャパン』の他、相手の外見を見ずにプロポーズに踏み切る『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN』。元恋人を含む男女メンバーが新たな恋に落ちるのか、復縁するのかを選択する『ラブ トランジット』。メンバーの中に絶対に恋をしない嘘つきが潜んでいる『オオカミシリーズ』など、挙げればきりがありません。
よくネタが尽きないな……と思わされるほど、毎度バラエティに富んだ設定を考える制作陣に舌を巻くこともしばしば。気付けば、私もここ数年で一気にこのジャンルにハマってしまいました。
ここまでのブームを引き起こしたのには何か理由があるはず。今回の記事では、恋愛リアリティーショーの魅力について、ユーザー体験の観点から考察していきたいと思います。
恋愛リアリティーショーを盛り上げた「2つのサービス」
今でこそブームになっていますが、「恋愛リアリティーショー」と呼べる番組は以前からありました。代表的なもので言うと、1999年から9年以上にわたって放送された『あいのり』です。当時はまだジャンルとして確立されておらず「話題になる番組の一つ」という位置付けだったように思います。
その後、2012年にスタートしたのが『テラスハウス』。この番組も話題になりましたが、大きく貢献したのはズバリ「SNS」。Twitter(現在のX)が一般的になった、10年代初頭とちょうど時期が被ります。
人の恋愛話やうわさ話は他人と共有したくなるもの。恋愛をテーマにしたテレビドラマなどでも似たことが言えますが、「早くみんなと話したい」という「人間の欲求に沿う体験」を自然と発生させるのが、恋愛リアリティーショーなのです。
話すことが目的なので、手段は対面でなくてもOK。むしろ「今この瞬間に話したい」というニーズにSNSは適していました。テキストという性質上、感想や推察が表出しやすいことも盛り上がりを加速させた要因といえるでしょう。
しかし、当時よりも今の方が、恋愛リアリティーショーを話題にしている人はさらに増えているように思います。SNSに加えてもう一つ「動画配信サービス」もブームの背景を語る上では欠かせません。
拍車をかけた「動画配信サービス」
Netflixが日本でサービスを開始したのは15年、Amazon Prime Videoが18年です。国産のサービスとしては、サイバーエージェントのABEMAが16年に始まりました。
そして『バチェラー・ジャパン』『今日、好きになりました。』は17年に、あいのりの復活シリーズ『Asian journey』は18年に開始しています。見事なまでに、動画配信サービスの勃興と人気シリーズの公開タイミングが合っているのです。
地上波での放送ではなく、動画配信サービスであることの何がポイントなのか。それは「オススメしたり、されたり」というコミュニケーションのハードルを下げた点にあります。
動画配信サービスの場合、視聴の場所や時間の「縛り」がありません。家族で一台のテレビを奪い合った時代とは異なり、個人が好きなタイミングで、自分のデバイス(スマートフォンなど)でコンテンツを見られる。結果として、誰かからオススメされたときに簡単に試せるし、逆に気軽に勧められるようになったというわけです。
試しやすい動画配信サービスとトリガーとしてのSNS。恋愛系コンテンツの口コミ、そしてブームを生む仕組みとしては、最強の組み合わせだったと言っても過言ではありません。
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