「恋愛リアリティーショー」戦国時代 ブームを支えるのは緻密な「体験設計」:グッドパッチとUXの話をしようか(2/3 ページ)
「恋愛リアリティーショー」ブームが起きています。先駆けは1999年に放送開始した「あいのり」でした。そこから現在に至るまでさまざまな恋愛リアリティーショーが生まれています。ここまでのブームを引き起こした裏には何があるのでしょうか?
恋愛リアリティーショーは「タイパが悪い」 なぜ人気?
いくらブームが起こりやすい環境があるといっても、肝心のコンテンツが面白くなければ、そもそもユーザーは選んでくれません。「カップルが生まれる」という構造は共通しているわけで、似たようなコンテンツが繰り返されれば、すぐに飽きられてしまうでしょう。
だからこそ、設定や出演者など、制作側はさまざまな仕掛けを用意するわけですが、最近の恋愛リアリティーショーは特に「山場」を先にユーザーに提示する傾向があります。
分かりやすいのは『オオカミちゃんには騙されないシリーズ』です。メンバーの中に「絶対に恋をしない嘘つき(オオカミ)」が一人以上潜んでおり、視聴者は恋のゆくえに注目しながら「誰がオオカミなのか?」という推理にも勤しみます。さらに、23年開始のシリーズでは、オオカミのうち一人を初回放送で明かしてしまうなど、新たな仕掛けを取り入れました。
嘘をつきながらも、誠実に恋愛のフリをしなければならない姿がまた反響を呼び、感想をSNSで語り合う――制作陣の描いたシナリオが実現できているのではないでしょうか。
こうしたコンテンツの傾向は、いわゆる「タイパ(タイムパフォーマンス)」を意識したものです。「費やす時間に対する満足度や得られた効果」という考え方であり、若い世代ほどその傾向が強いといわれています。
限りある時間の中でどの情報に触れるべきか。情報過多の時代だからこそ「面白いか分からないコンテンツには手を出せない」。視聴する前に特徴や面白さを知ってもらわないと、選ばれるための土俵にすら上がれないのです。
一方で、仕掛けを先にさらしてしまう「ネタバレ」にもメリットはあります。それは見る人に「安心感」を与えるという点です。『水戸黄門』や『古畑任三郎シリーズ』など、結末が分かっているのに見てしまう。それと似た点があります。
そもそも、恋愛というテーマは、タイパやネタバレとの相性は良くありません。先が分からずドキドキしたり、むず痒さなどに心震わされるはず。しかし、ユーザーはその結末を気長に待てるほどの時間はない。
そこでゲーム性を取り入れたり、ネタバレを挟んだりすることである種の「安心感」を与える。このワクワク感と安心感のバランス、つまりユーザー視聴体験をどう設計するかという点で、制作陣は試行錯誤を繰り返しています。
最近では、物語が2〜3日で決着する『今日、好きになりました。』など、超短期集中型のコンテンツも出てきています。恋愛というテーマでタイパとどう向き合うか、制作陣の苦悩はこれからも尽きないでしょう。
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