「恋愛リアリティーショー」戦国時代 ブームを支えるのは緻密な「体験設計」:グッドパッチとUXの話をしようか(3/3 ページ)
「恋愛リアリティーショー」ブームが起きています。先駆けは1999年に放送開始した「あいのり」でした。そこから現在に至るまでさまざまな恋愛リアリティーショーが生まれています。ここまでのブームを引き起こした裏には何があるのでしょうか?
時代に合わせて「共感のサポート」は進化し続ける
恋愛リアリティーショーに熱をあげているのは若者だけではありません。例えば、23年に配信された『あいの里』は参加メンバーが35歳以上、中には60代のメンバーが参加していることもあって、幅広い視聴者層を獲得しました。
さまざまな経歴を持つ男女が、田舎の古民家で共同生活を送りながらパートナー探しに挑む。他の番組にあるような、オシャレなホテルやアクティビティはなく、畑で農作業をしたり、焚き火台を作ったり。華々しい恋愛というよりも「人間ドラマ」に注目させる構成になっています。
『あいの里』のプロデューサーは、Real Soundのインタビューに対し「僕たちが撮ったのは、恋愛を通じて、メンバーが心に着ていた鎧を脱ぎ、素の姿を見せていくドキュメンタリー」と語っています。
子どものいるメンバーもいるので育児の話も出ますし、介護、出産、そして元パートナーの話題にも及びます。単に好きになった相手と結ばれることがゴールとも言えない、さまざまな葛藤をしながらも日々を生きていく姿に、私自身心を打たれました。
「35歳以上」「古民家での共同生活」という設定によって、メンバーは生活に根付いた素の姿を見せることができ、人間味あふれる素敵なシーンが生まれる。結果的に「タイパ」と対になる視聴体験を生み出しています。
先に挙げたABEMAの番組とは趣向こそ異なれど、両者には共通している点もあります。それは「共感」をキーワードに、ユーザーの視聴体験が考え抜かれていることです。
共感とは「他人の感情や経験を、あたかも自分自身のこととして感じて理解し、それと同調したり共有したりすること」を指します。つまり、どれだけ画面の向こう側にいるメンバーの行動や発言に想いを馳せられるかが重要になります。
だからこそ「ここが面白い」というポイントの明示も、メンバーから素の姿を引き出すような設定や環境も、思わずSNSでシェアしたくなるようなストーリーと共感を生む仕掛けが多く散りばめられています。忙しい毎日の中でも、夢中になって楽しめるにはどうすればいいか。制作陣による、今の時代に合わせた「共感のサポート」が磨かれ続けています。
『あいのり』が人気を博し、『テラスハウス』が盛り上がり、一旦落ち着いたと思ったら今度は大きなムーブメントに。人気番組の開始や終了とともに、恋愛リアリティーショー自体の人気も上下を繰り返してきました。
今後も、より強烈な視聴・共感体験を生むスキームが生まれない限り、恋愛リアリティーショー自体がなくなることはないでしょう。人は共感できるコンテンツを求めており、共感のサポートも進化し続けているためです。
ユーザー体験やサービス開発を生業にする者として、「共感のサポート」という観点で、恋愛リアリティーショーから学ぶことはたくさんあります。
どのような工夫を施すことで、忙しい日々を過ごしているユーザーにハマってもらえるのでしょうか。気になった方は、気恥ずかしさを少し我慢(?)して、コンテンツやSNSでの盛り上がりを一度ご覧になってみてください。
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