ソニー・ミュージックからゲームパブリッシャーへ転身 創業社長に聞く業界の課題:マネジャーが不可欠(2/2 ページ)
少数精鋭のクリエイターが開発を分担し、低予算・短期間で作り上げる「インディーゲーム」。ソニー・ミュージックからゲームパブリッシャーへ転身した創業社長に業界の課題を聞いた。
「速やか」にゲームを出せるマネジャーが不可欠
――なぜ2作目に続かないのでしょうか。
学生が作るインディゲームって、学生時代の大半を開発期間に充てる「卒業制作」のような形のことも珍しくないんです。それで、そのゲームをポートフォリオにして大手のゲーム会社に就職していくわけです。もちろんこれが駄目と言うつもりはないのですが、学生時代にしかない1作目のパッションを2作目にもぶつけるべきだろうと思ったわけですね。
ですから、学生時代に作った1作目を速やかに収益化させて、2作目を作る原資を与えなければなりません。またそうすれば自信につながって、ゲーム会社に就職せずとも、自分たちでもデビューしてやっていけるというように選択肢が広がると考えたわけです。
――だからこそ、「速やか」にゲームを出せるマネジャーの存在が不可欠なのですね。
自分たちでもゲームを作れる才能があるのに、一ゲーム企業のプログラマーなどで終わってしまうのは機会損失だと思うんですよね。実際に海外だとこうして国を挙げて、人材を支援するところも現れ始めています。だから彼らは、次のゲームを作るための準備も生活の心配もせずに、次のゲーム開発に集中できます。それで、結果的にどんどん優秀になっていっているわけです。
――日本のゲームクリエイターの支えになりたい思いもあったわけですね。
この時も社内で検討をしたのですが、さまざまな壁もあり……。「バンド」という考え方自体がソニー・ミュージックの考えですから。ですのでこれをソニー・ミュージックの中でやろうと思いました。
ただ、さすがにグループ企業同士でソニー・インタラクティブエンタテインメント(16年にSCEから社名変更。以下SIE)に筋は通さないといけないので、社長同士で話し合いをしたところ、2〜3回やりとりするうちにOKが出ました。それでソニー・ミュージックの中に、この会社の前身となるUNTIES(アンティーズ)というゲームレーベルが17年に社内ベンチャーとして立ち上がったんです。
――それがその後、フィーニックスとして19年に独立するわけですね。
そうですね。今いる社員も多くがソニー・ミュージック時代から共に働いているメンバーです。
――ソニー・ミュージックにいた坂本さんだからこそ伺いますが、同じ「インディーズ」でも音楽とゲームには違いがありますよね。その違いについて教えてください。
ゲームは日本だけでなく、全世界の市場とつながっているんですよね。音楽の場合、歌詞は日本語ですし、英語にしたとしても英語で歌詞を歌うのは大変です。その点、ゲームはそもそも文字情報で勝負していない作品も多いですし、言葉の壁は翻訳で補える部分が大きく、ローカライズも比較的容易です。
日本ってテレビゲーム発祥の地として世界中のゲームファンから好かれている場所なんですね。ロックでいう英国みたいなものだといえます。こうした“地の利”もあるので、ゲームだと日本発でもあっという間に世界で勝負できるんですよ。クリエイターとしてもエンタメとしても、こんなに世界に届きやすいコンテンツってそうないなと思っています。
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