激変する大阪の街並み まだ見ぬ“集客ポテンシャル”とは?:後編(1/3 ページ)
大阪府と大阪市が官民一体で進めている都市再生事業「大阪7大再生プロジェクト」。記事後編では、都心から少し離れた副都心や都心の辺縁部にあたる「天王寺・阿倍野」「大阪城公園(OBP)」「臨海部」に焦点を当ててみたい。各エリアの特徴を探り、点でつないでいくと、大阪府市が描く街づくりの戦略や意図が浮かび上がる。
大阪府と大阪市が官民一体で進めている都市再生事業「大阪7大再生プロジェクト」。記事の前編「御堂筋が『シャンゼリゼ』に? 大阪の街並みに“激変”迫る」では、「大阪駅周辺(梅田)」「中之島」「御堂筋」「難波」といった都心エリアの開発状況とその特徴を見てきた。
後編では、都心から少し離れた副都心や都心の辺縁部にあたる「天王寺・阿倍野」「大阪城公園(OBP)」「臨海部」に焦点を当ててみたい。各エリアの特徴を探り、点でつないでいくと、大阪府市が描く街づくりの戦略や意図が浮かび上がる。
著者紹介:若杉優貴(わかすぎ ゆうき)/都市商業研究所
都市商業ライター。大分県別府市出身。
熊本大学・広島大学大学院を経て、久留米大学大学院在籍時にまちづくり・商業研究団体「都市商業研究所」に参画。
大型店や商店街でのトレンドを中心に、台湾・アニメ・アイドルなど多様な分野での執筆を行いつつ2021年に博士学位取得。専攻は商業地理学、趣味は地方百貨店と商店街めぐり。
アイコンの似顔絵は歌手・アーティストの三原海さんに描いていただきました。
ハルカスに星野リゾート……激変した天王寺
天王寺エリアの顔といえば、近鉄グループによって2014年に竣工した地上60階・地下5階建て・高さ300メートルの超高層ビル「あべのハルカス」だ。館内は日本一の店舗面積を擁する百貨店「あべのハルカス近鉄本店」を核に、大阪マリオット都ホテルやオフィス、近鉄大阪阿部野橋駅などで構成される。
この「あべのハルカス」の完成に合わせ、隣接する天王寺公園エントランスに生まれたのが「てんしば」だ。てんしばは15年に完成した芝生広場で、ドッグランやフットサルコート、カフェ、コンビニなども設けられており、てんしばを活用したさまざまな大型イベントも開催されるようになった。さらに、19年には隣接して「てんしばi:na(イーナ)」(現在はネーミングライツにより「RIZAPてんしばi:na」)が誕生。ここには日本最大級のインドアクライミング「noborun!」やアドベンチャーコースなどが開設されており、天王寺公園は幅広い世代が楽しめる場へと生まれ変わった。
天王寺区は動物園、美術館、そして四天王寺などの寺社も多くあるほか、通天閣がある新世界地区にも面しており、歴史のある観光地・歓楽街として知られるが、古くから開発された下町ゆえに人口減が続いていた。一方で、ハルカスの完成や天王寺公園の再整備後、天王寺駅近くでは複数のタワーマンションの建設が行われたほか、周辺地域でも22年には寺田町駅にディスカウントストア「ドン・キホーテ」を核としたJR西日本の駅ビルが、新世界に近い新今宮駅前(浪速区)に星野リゾートの複合宿泊施設「OMO7大阪」が相次いで誕生するなど、都心のオフィス街とは一味違ったかたちの、アミューズメント性を備えた開発が進みつつある。
また、天王寺区と生野区にまたがり、近年コリアンタウンとして観光客の人気を集める鶴橋地区においても、複数個所で官民双方による再開発計画が持ち上がっている。鶴橋地区は路地や老朽化した建物が非常に多く、また地域の避難所となっていた小学校の閉校もあり、観光客に人気のレトロな街並みを維持しつつ、災害時の安全性をいかにして確保していくかが課題となっている。
関連記事
- 御堂筋が「シャンゼリゼ」に? 大阪の街並みに“激変”迫る
大規模開発が並行して進む大阪。街並みはこれから、どんな変貌を遂げていくのか――。前編では、大阪市の都心エリアにあたる「大阪駅周辺」「中之島」「御堂筋」「難波」の開発プロジェクトとその特徴を見ていく。 - ダイエーVS.西友の「赤羽戦争」はなぜ起きた? 駅東口2大スーパー、半世紀の歴史に幕
東京・赤羽駅東口を代表する老舗スーパーとして約半世紀にわたり親しまれた「西友赤羽店」と「ダイエー赤羽店」が今年、相次ぎ閉店。かつて両店は「赤羽戦争」と呼ばれる歴史的商戦を繰り広げていたことをご存知だろうか――。 - 「二流の地」から「流通の覇者」へ イオンが成功した出店戦略とは
2022年2月28日、長崎県佐世保市にある総合スーパー「イオン佐世保店」が閉店した。この閉店は、イオングループにとって「ひとつの時代の終焉」を意味するものであった。実は、イオン佐世保店は「ジャスコ」として営業を開始した商店街立地の高層総合スーパーのなかで、2022年時点でも同業態のまま営業を続ける最後の店舗であり、1970年代における流通戦争の生き証人でもあったのだ。 - 「ここじゃ買えんの?」 地方百貨店のEC戦略が残念な結果になってしまった理由
コロナ禍もあり、全国各地で商業施設の閉店が相次ぐ昨今。そうしたなか、2022年春にひっそりと閉店したデパートがある。その名も「ストライプデパートメント」。「そんなデパートは聞いたことがない」という人がほとんどだろう。しかし、このストライプデパートメントの閉店は、全国各地の地方百貨店に大きな影響を及ぼすものとなった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.