「渋谷に来ないで作戦」は成功か ハロウィーン対応を誤れば、街が衰退する:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
10月31日はハロウィーンだ。渋谷の街には「ハロウィーンイベントの会場ではありません。」と書かれた垂れ幕が掲げられているが、この作戦は成功するのか。成功したら成功したで、街にとっては……。
街の衰退を招くだけ
「渋谷の治安と訪れた人の安全を守るために必要な出費だ」という意見もあるだろうが、これだけの税金や人員を投入したのだから「治安や安全を守る」ことに加えて、渋谷の発展につながるような効果的な施策にすべきでないか。
先ほど申し上げたように、渋谷のハロウィーンは遠く海外から観光客がやって来るほど有名になっている。が、渋谷区や日本政府観光局が予算をつけて、「ハロウィーンは渋谷でどうぞ」なんてPRをしたわけではない。日本を訪れた外国人観光客がSNSで広めたり、母国に戻ってクチコミで広めたりしたのだ。
インバウンドが解禁になったことで多少、景気が上向いたことからも分かるように、これからの日本は文化、歴史、芸術、自然などの「観光」が基幹産業になっていく。人口減少で国内消費者がみるみる減少して「ものづくり」も周辺国にお株を奪われているので、ソフトパワーとサービス業で食べていくしかないのだ。
そういうこれからの日本の姿を考えたとき、「宣伝もしないのにクチコミだけで世界中から人が集まる」という渋谷のハロウィーンは、非常に強い「武器」になることは言うまでもない。にもかかわらず、税金を使ってキラーコンテンツを潰すことが、本当に国益にかなうことなのか。
もちろん、梨泰院の事故のようなことが起きないように安全管理をしっかりしなくてはいけない。これは言うまでもないことだが、「来ないで」を繰り返すだけでは「観光都市」として発展も成長もしない。
住民側の感覚では「マナーがいい客がそこそこ来てくれたらいい」というのが理想だが、本当に魅力のある街というのは、マナーのいい客も、それほどよくない客も含めて多種多様な人が集まるものだ。しかも、渋谷にたむろする若者や外国人観光客は、ゴチャゴチャと混沌としているカオスな街に魅力を感じてやって来ている部分もあるのだ。
つまり、「渋谷に来ないで」というのはインバウンドを柱とする日本的にも、渋谷という街の魅力向上的にもあまり得策ではないのだ。せっかく出来上がったブランドを有効活用して中長期的には、世界中に「渋谷? ああ、ハロウィーンが有名なとこね」と言われるような「観光イベント」へと昇華させて、警備やゴミ拾いの人々の費用をしっかりとカバーできるようにマネタイズもできるようにしたほうがいい。「来ないで」ではなく「ハロウィーンチャージ代をいただきます」という方向へ変えていくのだ。
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