スマホで撮れるのに、なぜ「チェキ」は人気なのか いまでも“論争”が起きる商品群:過去最高の売り上げ(5/5 ページ)
まもなく発売25周年を迎える富士フイルムの「チェキ」シリーズ。世界的に需要が高まっており、2022年は過去最高の売上高を記録した。人気の秘密は……。
賛否両論を生んだ「新製品」の狙い
10月5日に発売した新製品「インスタックス パル」もまた、賛否両論を呼んでいる。というのも同製品は撮影に特化しており、印刷機能を持たない。機能も最小限に抑えられている。撮影した写真はスマホアプリに自動転送、あるいは本体に保存され、プリントする際は別売りのスマホプリンターを購入する必要がある。
本格的な撮影を好む人やインスタント機能に魅力を感じている人には敬遠されるが、より気軽に撮影を楽しみたい人や新しいモノが好きな人には受け入れられているそうだ。
なぜ、最大の特徴である「インスタント機能」をなくし、機能を抑えて小型化したのか。2つ理由があり、1つめは、写真撮影のおもしろさを広げたいと考えたからだという。
「同製品は、何枚か撮影した後にスマホで見ることになります。この時間差によって『写ルンです』のようなワクワク感が味わえるかなと。また、ディスプレイがないので構えずに撮影できます。通常のカメラって撮られる側が構えてしまうじゃないですか」
理由の2つめは、ポータブル性を高めるため。これまでは本体にフィルムを備えており、それ以下のサイズにできなかった。しかし、印刷機能を切り離したことで手のひらサイズを実現したのだ。
「消費者インタビューで『チェキを買わない層』にも話を聞いたら、買わない理由の圧倒的1位が『大きい』だったんです。それならばと思いきってフィルムを取り除き、小型化を追求しました」
結果、インスタックス パルは各所から注目を浴び、10月の外販が計画に対して1.6倍の見込みだという。
チェキはシリーズ全体で好調だが、世界的に需要が高まるあまりフィルムが品薄になっている。富士フイルムでは以前から設備投資をしてフィルムの生産数を増やしているが、それでも供給が追いついていない。9月には「神奈川事業場足柄サイト」(南足柄市)の工場設備に約45億円を投じると発表、現在よりも生産能力を約2割向上させる見込みだ。
25年をかけて大胆な進化を遂げたチェキ。これからも枠に収まらない商品開発に期待したい。
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