最低賃金1000円超で「失業者の増加」は真実か? 急激には悪化しない3つの理由:全国平均1002円(3/3 ページ)
「最低賃金をアップさせると、倒産や人員の源泉により雇用機会が失われ失業者が増える」というのは経済学の世界では長くありました。10月に最低賃金が全国平均1002円になり、初めて1000円超を記録しました。今回の改定で失業者増になってしまう可能性はあるのか、考えてみましょう。
最低賃金アップで困る人は?
もっとも最低賃金の上昇により経営が成り立たなくなる企業もあるでしょう。パート社員に最低賃金を支払うことで収支を合わせているような企業は、事業を継続できなくなります。地方ではそうした企業もあるかもしれません。
その結果、どうなるのでしょうか? 都市圏では例えば、アルバイト先の飲食店が廃業しても今までよりも高い時給を出してくれる飲食店や別のアルバイトが見つかります。ただし地方によっては、アルバイト先といっても簡単には見つからないケースもあるでしょう。結果として雇用の機会を求めて大都市圏に移住する人がでてきます。すでに問題となっている三大都市圏、特に東京への人口集中に拍車がかかると予想されます。
それ以上に深刻なのは、各種のサービス業が撤退することです。人口の減少により、売り上げが落ちれば全国展開しているチェーン店も不採算店を閉鎖しなくてはならなくなります。スーパーが閉店したり、介護サービスが廃業したりすれば、そこで暮らす人々の生活が成り立たなくなってしまいます。企業としても利益を追求しなければならないので無理もない選択かもしれませんが、誰もが大都市圏に移住できるわけではなく、そこで暮らし続けなければいけない人もいます。
予算の確保は難しいですが、国としても企業が採算を度外視しても営業を続けられるような助成制度なども検討する必要があるかもしれません。最低賃金のアップは、失業率の急激な上昇をもたらなさい代わりに、さらなる大都市圏の人口集中と地方の衰退をもたらす恐れはあります。
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