大事な会議の日に有休 部下の申請、断れる? 経営者が使える武器とは:実際の裁判事例も紹介(1/3 ページ)
重要な会議の日にいつも有給休暇を申請してくる部下がいます。会議に参加してほしいのですが、有休取得は権利なので強く言えずにいます。有休取得を断ることはできるのでしょうか?
年次有給休暇にまつわる労使間のトラブルは結構多く、従業員が不満を感じている項目の一つでもあります。年次有給休暇は労働者の権利で理由を問わず、いつでも使えるという原則は浸透してきましたが、その使い方について会社と従業員でもめてしまうケースがあります。
今回は「重要な会議の日にいつも有給休暇を申請してくる部下、断れる?」について、経営者が唯一使える武器と実際の裁判事例を交えて解説します。
年次有給休暇が定められている法的な観点
そもそも年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために有給で付与される休暇を指します。
これは労働基準法で定められていますので、会社にとっては義務であり、労働者にとっては権利です。
労働基準法 第三十九条
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
2. 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。<以下、略>
この条文で定められた年次有給休暇の付与日数を表にすると、以下の通りになります。
まれにパートタイム労働者には年次有給休暇はないと勘違いされるケースがありますが、この表の通り、週1日働くようであれば日数は少ないですが使用する権利があります。
もともと年次有給休暇の使用タイミングは労働者に委ねられています。そのため、これまで全く使用されなかったとしても、会社は特に対応する必要はありませんでした。しかし、全く活用されていないケースが多く見られるようになった結果、2019年4月から、全ての企業において年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日の取得が使用者に義務付けられました。
そして、年5日の取得義務を含めて年次有給休暇については罰則が定められていますので、注意が必要です。
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