「マーケティング思考力」が分かる具体事例
このふわっと概念で終わりたくないので、最後に1つの事例を用いて、このマーケティング思考力の3要素をお話します。
世の中に落ちているサービスを取り上げようと思ったのですが、評論するのはあまり好きではないので、自分自身がいま携わっている1つを抜き出して事例とします。
事例:「ノビシロ」というダイレクト型定量調査サービス
「ノビシロ」はノバセルが手掛ける、最短20分で100人の顧客の声を集めて即経営判断に生かせる、生の声が聴ける超高速定量調査サービス。これまで定量調査を実施しようとすると、1調査につき1カ月以上かかり、数十万円のコストがかかっていましたが、ノビシロは事業会社や代理店が直接ノビシロの先にいる2200万人のモニターに調査を投げることができます。
というしれっとした番宣はここまでにしますが、このサービスのマーケティング施策を事例に、マーケティング思考力の3要素を説明してみます。
A:右脳と左脳のバランス:賢く、そしてバカになれるか
B:俯瞰と虫の目の両立:一人の顧客に向き合いながら、事業全体を見れるか
C:インパクトの可視化・想像力:目の前のこの施策がどれだけのインパクトを生じさせるのかを類推できるか
(この先、3要素を使っている部分は太字にしています)
まず、最近ChatGPTを実装するという意思決定をしました。なぜかというと、ノビシロはリサーチの早い・安いを実現しているのですが、一方でユーザー様からは、「そもそも調査票を自分で作成するのがめんどくさい。難しい」という声を頂きました。
つまり、早い・安いという便益は良いのですが、そもそも調査をする入口のサポートがないので、ノビシロを導入してもなかなか調査ができないという課題があったということです。
あえて言語化する必要もないですが、虫の目になって一人一人のお客さまに向き合ってみた、ということです。
このペインを解消するために、試行錯誤した結果、ChatGPTを実装することでこの壁を乗り越えようと決めました。ChatGPTをプラグインし、「調査サービスノビシロの改善」などと知りたい事を入力すると、ChatGPTが適切な調査票を自動生成する機能を追加したのです。顧客ペインをテクノロジーで解消する、非常に論理的に正しそうだなと思いました。
やや俯瞰すると、この数カ月SaaSがChatGPTを実装したというリリースが相次いでブームっぽくなっており、SNSでもよく見かけました。多くの企業でも恐らくはこの新しいテクノロジーが使われているツールを使いたいというニーズもあるはずなので、いち早くこのChatGPT実装のリリースをだしたいと思い、6月頭についにリリースに漕ぎつけることができました。
これはもう半端ない問い合わせがくるんじゃないか、とわくわくして待っていたのですが、実際にきた問い合わせは私の想定の10分の1くらいでした。つまり、自分の想像力が弱かったがために、施策に対するインパクトをかなり読み間違えたのです。
すぐに、これをどう修正するかを頭の中で考えてみました。ChatGPTのリリースを出すことにたどり着けたそれまでの努力もあり、心はかなり情熱的で、前の日も鳴りやまないであろう問い合わせを想定して寝たのですが、頭をすぐに冷静に戻して考えてみました。
反省、そして仮説としては以下の2つです。
(1)このリリースの拡散はSNSメインで実施しており、すでにわれわれがSNSを通してアプローチできる方々にはノビシロは認知されており、次に必要な施策は理解・購買フェーズを促すアクションへとシフトしているのではないか(状況を冷静に俯瞰する)
(2)だとした場合、ChatGPTを実装して自動化しました、というファクトを述べただけではサービスの理解につながらず、お客さまにとっては“面白くない”ことだったのではないか
じゃあノビシロというサービスをより理解してもらうためには、お客さまにサービスの何をもっと理解してもらう必要があるのか。いろいろこれまでの過去を振り返ると、YouTubeで動画を配信した時はかなりノビシロに反響がありました。この動画の中では、「今即興で顧客理解しよう」ということで、ノビシロを使っている様子を公開しています。
ここから、今ノビシロが理解されないといけないのは「どういうシチュエーションでこのサービスを使えばいいのか」ということではないのか? という仮説が生まれます。
これ以上話すと長くなる、かつこれからの施策の話が入ってしまうのでお話できないのですが、例えば最近のふとした仕事の1シーンを切り出しても、これだけのマーケティング思考と、そしてたくさんの失敗をしていることに気付きます。
伝えたかったのは、この課題に対してフレームから入ったとしても、全く通用しなかっただろうということです。
今日お話しした3要素を意識しつつ、もっと俯瞰できないか、もっと一人の顧客に向き合えないか、もっとわくわくするアイデアはないか、何か見落としている点はないか――を考え続けることを意識しています。
このnoteを読んで、「いやもっとこうだ!」とか、意見があればぜひ頂ければうれしいです。
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