24年閉館「五反田TOC」はどう変わる? 世にも珍しい“巨大卸売ビル”の過去と未来:東京ドーム4個分(3/3 ページ)
半世紀にわたり、五反田エリアのランドマークとして親しまれてきた「TOCビル」が、建て替え・再開発のため2024年中に閉館する。高度経済成長期、この地にこれほどまでに大きな建物が生まれ、「卸売店を中核としたテナントビル」となったのには、どういった背景があったのか――。
TOCビルが完成した1970年ごろは、先述した東日本橋に代表されるような問屋街の全盛期。当初はテナントの誘致に苦労したというが、ビル内を移動するだけで各問屋をめぐることができ、さらにトラック専用の車寄せに搬入口・荷捌き所・配送センター、荷物用の大型エレベータも備えるという小売業・卸売業双方にとっての便利さ・使い勝手の良さが広まるとともに入居店舗も増え、卸売店のみならず多くの小売店や飲食店も出店。さらに期間限定店舗やイベントに対応したホールも併設するという現在のスタイルが確立されたのだった。
TOCはどう生まれ変わるのか
完成から約半世紀を経て、いよいよ建て替え計画が始動することになったTOCビル。
TOCビルを運営する株式会社テーオーシーによると、同ビルは2024年中に閉館(当初は2023年中を予定)して建て替えられる予定で、新・TOCビルは地上30階・地下3階建て・高さ約150メートル、延床面積約27万6000平方メートルの超高層ビルとなる計画だ。
現在、TOCのエントランスには、竣工を見ることなく1968年に逝去した大谷米次郎の胸像が飾られている。来館者に微笑みかける米太郎は、新・TOCビルに再び戻ってくるのだろうか。
参考
TOCWebサイト(IR ライブラリ等)
寿屋社史編纂室(1999):『寿屋の50年』壽屋.
ジャスコ株式会社 編(2000):『ジャスコ30年史』.ジャスコ株式会社.
鈴木安昭・関根孝・矢作敏行(1997):『マテリアル 流通と商業 第2版』有斐閣.
ダイエー社史編纂室(1992):『ダイエーグループ35年の記録 − For the customers』アシーネ.
日本経済新聞社編(1992):『私の履歴書―昭和の経営者群像〈5〉』日本経済新聞社.
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