日本から「転勤」がなくなるかもしれない、これだけの理由:「転勤拒否族」は甘え?(3/3 ページ)
日本から「転勤」がなくなる日は来るのだろうか――。手当を増やすことでなんとか転勤を受け入れてもらおうとする企業がある一方で、転勤制度を極力なくしていこうという企業も出てきている。日本に特有と言われる転勤制度は、これからどうなるのだろうか……?
それでも転勤が必要なら……企業に求められる対応
(4)事業拡大、新規拠点立ち上げのために必要というのは、転勤必要論の最後のとりでかもしれない。
例えば、首都圏で成功した店を地方にも出すとなったら、既存店のノウハウを知っている人間が行くのが合理的だ。
だがそれも、転勤ではなく出張やオンラインで代替できないかと考えてみたらどうか。本店から一時的に出向いた人が地方の人材を採用し、ノウハウを伝授すれば、地方の人材のキャリアの可能性も広がる。
また、なくすべきは社員の意に沿わない転勤であって、希望者がいるなら転勤させてもよい。コロナ禍を経て、人口密度の高い都会よりも地方で暮らしたいと考える人も増えた。リモートワーク環境も以前より整い、地方でできることも増えた。このような流れの中で地方に異動したい人もいるだろうし、もちろん地方から都心への異動を希望する人もいるだろう。一人一人の希望やライフプランを丁寧に確認していくことで、新天地で能力を伸ばす人材が出てくる可能性がある。
その際に大事なのは、仕事や待遇の魅力だ。社員が別の地域に行くことを希望したとしても、そこに今よりも魅力的な仕事があれば転職してしまうかもしれない。逆に面白い仕事、成長の機会になるような仕事がそこにあれば、「行ってもいいよ」という社員が出てくる可能性が高まる。会社からの一方的な命令ではなく、社員の意向を踏まえつつ、必要な人材を必要な場所に呼び寄せる策を考えていく必要があるだろう。
やつづかえり
コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。2013年より組織に所属する個人の新しい働き方、暮らし方の取材を開始。『くらしと仕事』編集長(2016〜2018)。「Yahoo!ニュース エキスパート」オーサー。各種Webメディアで働き方、組織、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。著書に『本気で社員を幸せにする会社』(2019年、日本実業出版社)。
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