6年前に「社員寮」を建てて、どんな“効果”がでたのか 50%→0%の数字に驚き:水曜日に「へえ」な話(2/5 ページ)
大阪に本社を置く「三和建設」が気になるデータを出してきた。6年前に寮を建てたところ、ある数字が劇的に下がったというのだ。どういうことかというと……。
離職率が高い
三和建設は建物の設計・施工のほかに、不動産の賃貸業務なども手掛けている。創業は1947年で、従業員数は176人(2023年10月1日時点)。ここ数年の売上高を見ると、100億円前後で推移しているので「安定している感」が漂っているが、会社側はある悩みを抱えていた。「離職率の高さ」である。
毎年、新入社員は10人ほど入ってくるものの、多くの若者が3年以内に辞めていく。過去20年ほどの離職率を見ると、50%ほど。一般的に建設業界は若者の定着率が低いといわれているが、同社は「それをよし」としていなかった。「若手社員に辞められては困る。なんとかしなければいけない」ということで、あの手・この手を打ったのだ。
試用期間を経て、正式な入社時に謝礼(30万円、リファラル採用で紹介者に)を用意したり、同期と旅行する際には旅費(最高6万円)を支給したり、帰省手当(月1〜2往復)を設けたり。このほかにもまだまだあって、ちょっと数えたところ、50近くもあるではないか。しかし、である。新しい制度をつくっても、離れていく。また新しい制度をつくっても、辞めていく。
福利厚生を充実させているのに、若手社員はなぜ辞めていくのか。その原因を調べていくと、あるキーワードが浮かんできた。「孤独」だ。
三和建設の場合、入社してしばらくすると、現場を担当させられる。1つの現場に6カ月〜1年ほど足を運ぶわけだが、チームメンバーは2〜3人のことが多い。所長、主任、新人のケースもあれば、所長、新人の2人だけのことも。上も下も右も左もよく分からない中で、現場に放り込まれる。また、歳の離れた先輩と同行しなければいけない。さらに、現場でグズグズしていると、職人から怒られる。
肉体だけでなく精神的にもヘトヘトになって、ワンルームのマンションに帰っても、部屋には相談相手がいない。仕事でつらいことがあっても、誰にも悩みを伝えることができず、孤独が続く。そして、我慢というコップの水があふれると、会社を去っていく。こうしたパターンが多いことが分かってきたのだ。
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