熊本大、「アニサキス殺虫装置」普及でクラファン開始 “刺身の天敵”、1億ワットで瞬殺:最終目標は1600万円
熊本大学が“刺身の天敵”アニサキスを除去する「アニサキス殺虫装置」の普及に向け、クラウドファンディングを始めた。1口3000円から寄付を募っており、最終的に1600万円の資金獲得を目指す。
熊本大学が“刺身の天敵”アニサキスを除去する「アニサキス殺虫装置」の普及に向け、クラウドファンディングを始めた。1口3000円から寄付を募っており、最終的に1600万円の資金獲得を目指す。
アニサキスはサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生する寄生虫の1種。食中毒を引き起こす一因になっていることから、刺身など生食用食品にとって天敵となっている。
アニサキスを原因とする食中毒が発生した場合、各保健所はその店舗に対し、食品衛生法に基づき営業停止処分を下すことができる。一方で食中毒を引き起こした水産加工業者の中には卸先との取引を停止になり、月間取引額が5000万円減少したケースもあるなど、アニサキス対策は喫緊の課題ともなっている。
現在、多くの事業者は食中毒防止のため、直径1mm長さ2cmほどの小さなアニサキスを手作業で取り除いているが、加熱や冷凍以外に有効な手段がなく、手間がかかることから、将来的に生の刺身の提供ができなくなる可能性がある。
こうした背景から熊本大学は水産加工メーカーのジャパンシーフーズ(福岡市)や国立感染症研究所の研究員らとともに、アジに1億ワット(100MW)とされる巨大電力「パルスパワー」を当て、殺虫する世界初のシステムを開発した。
ただ、高価な装置のため、社会実装へのハードルが高いのが実情だ。クラファン実施で、商品化に向けたサプライヤーとなるメーカーを探し、サバやサンマ、サーモンなど他の魚類での活用も模索する。
熊本大産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授は「クラウドファンディングでの賛同によって社会実装を加速させることができる。将来的にはアニサキス以外の魚介類寄生虫の殺虫や、魚介類以外の寄生虫にも本技術が活用できないか模索していくことを計画している。この技術の発展が日本のさまざまな生食文化の未来を救うと信じている」としている。
クラファンは12月26日午後11時まで募集中。記事公開時点(11月16日午後3時)では総額662万8000円の寄付が集まっている。
関連記事
- アニサキス食中毒、AIが救世主に? 高精度の検知システムが登場 特徴は
魚介類に寄生し、人の体内に入ると激しい腹痛やおう吐を引き起こすアニサキス。6月は、アニサキスによる食中毒被害が増加する時期でもある。こうした食中毒被害をなくそうと、画像認識ソフトウェアなどの開発を手掛けるトラスト・テクノロジー(東京都国立市)は、魚の切り身に潜むアニサキスをAI(人工知能)で検知する画像検査システムを開発した。 - 続・父の敵討ち――イカ専用のアニサキス検出器「イカセン」、和歌山のメーカーが開発 狙いは?
魚介類に寄生するアニサキスによる食中毒被害が増加する中、和歌山県紀の川市の板金加工メーカー、エムテックはイカに潜むアニサキスを検出する専用機器「イカセン」を新たに開発した。LEDによる白色の可視光線にかざすことで、寄生虫を見つけやすくする。 - 「父の敵討ち」――魚に紫外線あてアニサキス検出 大手スーパーも導入する板金加工メーカーの技術とは?
サバやアジなどに寄生するアニサキスによる食中毒被害が後を絶たない。そんな中、和歌山県紀の川市の板金加工メーカー、エムテックが、魚の切り身に紫外線を当ててアニサキスを検出するハンディ型装置を開発した。 - 悪者アニサキス、スーツ着せるといいヤツに? 阪大教授、サバ100匹さばき「がん治療」の夢拓く
元AKB48でタレントの板野友美さんが「出産より痛かった」と報告し話題になったアニサキスによる食中毒。そんな嫌われ者の寄生虫に、“スーツ”を着せることに成功したと大阪大学の研究グループが発表した。スーツを着せたアニサキスは、将来、がん治療に生かせる可能性があるという。一体、どういうことなのか。 - 刺身に電気を流して「アニサキス」撲滅 苦節30年、社長の執念が実った開発秘話
魚介類にひそむ寄生虫「アニサキス」による食中毒被害が増えている。この食中毒を防ぐため、創業以来30年以上に渡り、アニサキスと戦い続けてきた水産加工会社がある。昨年6月、切り身に電気を瞬間的に流してアニサキスを殺虫する画期的な装置を開発した。開発秘話を社長に聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.