ボジョレーヌーボ、毎年の話題化に見る「新商品ヒットのカギ」:グッドパッチとUXの話をしようか(1/3 ページ)
毎年11月の第3木曜日には「ボジョレー・ヌーボ」の解禁日としてニュースなどで報道されます。なぜ、毎年話題になるのでしょうか? その秘密から「新商品ヒット」を生み出す方法を考えてみました。
連載:グッドパッチとUXの話をしようか
「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。
今年もまた、新しい味を楽しめる日がやってきました。今日、11月の第3木曜日は「ボジョレー・ヌーボー」の解禁日です。毎年つくキャッチコピーは「ここ10年で最高」「並外れて素晴らしい年」「記憶に残る素晴らしい出来栄え」など、不作の年などないのでは? と思わずツッコミを入れたくなってしまいます。
そもそも、ボジョレーはなぜ他のワインと違って、解禁まで買えないのか、不思議に思ったことはありませんか?
新商品や季節限定といったラベルに目を引かれ、手に取ったらつい試してみたくなってしまうのが消費者心理というものです。これは、日本人ならではの食文化における歴史が深く関係しています。
今回の記事では、ボジョレーというワインが特に日本で話題になる理由を、日本人特有の文化的背景とそこから仕立てられた「特別な」ユーザー体験という観点から解説していきます。
ボジョレーはどのように地位を確立したのか?
「ボジョレー・ヌーボー」とは、フランス・ボジョレー地区でその年に収穫したぶどうを醸造した新酒ワインで、もともと地元民の手軽な日常酒として1800年代ごろから愛されていました。
その文化が世界中に広がるきっかけとなったのは1951年。それまでフランスでは軍隊用ワインの供給を計画的に行うため、綿密な販売スケジュールで管理されていました。軍制度のさまざまな見直しによりその方針が廃止されると、各生産者がどこよりも早く出荷し売り上げを増やそうと競い合うようになりました。
その競争がエスカレートした結果、ワインとしての品質が保たれないことが問題に。それを防ぐため、特定の解禁日が制定されました。
その後、近隣の国であるスイス、ベルギー、英国へと文化が浸透し、1980年代には米国、カナダ、ドイツ、オランダ、オーストラリアへと次々に広まっていきました。日本に上陸したのは85年で、バブル景気真っ只中で起こった高級ワインブームに乗りましたが、バブル崩壊とともに終焉します。しかし90年代後半から再度起こった赤ワインブームによりメディアでも解禁日が取り上げられ、その人気を確実なものにしていきます。
また、2009年には消費不況や製造・輸送コスト軽減の観点から、ペットボトル型の商品が相次いで投入され、1000円を切る激安ボジョレーが登場し世間を驚かせました。スーパーマーケットやコンビニ、ディスカウントストアでも販売されるようになり、ボジョレーを目にする機会が次々に増えていきました。
関連記事
- 100年続く「ディズニーアニメ」の変化 子どもより大人がハマる秘められたメッセージ
10月16日、ウォルトディズニーカンパニーは創立100周年を迎えた。ミッキーマウスの人気に伴い、その地位を確固たるものにしてきた同社だが、最近手掛けるアニメ映画のテイストに変化が見られる。一見子ども向けに見えるアニメにハマる大人が増えてきたのだ。どのようなメッセージが隠されているのかというと…… - パンはどこでも買えるのに、3990円のサブスクがなぜ人気? UX観点からワケを考える
パンのサブスク「パンスク」が人気だ。毎月8個程度のパンが入って、3990円(送料込み)と決して安くはない。パンはスーパーマーケットやコンビニ、近くのパン屋、どこでも買えるがなぜ今、パンのサブスクが人気なのだろうか? UXデザイナーの筆者が解説します。 - 10年で市場規模が10倍に 「アナログレコード」復活の理由をUX観点から考える
サブスクサービスで音楽を聴くことが増えてきましたが、意外なことにここ10年で「アナログレコード」の市場は10倍に成長しています。なぜアナログレコードが人気なのでしょうか、その秘密をUXの観点から考えてみました。 - なぜ人は「ゼルダの伝説」にハマるのか? マリオのユーザー体験と比較して分かったこと
5月12日に発売された「ゼルダの伝説」の最新作が、発売たった3日で世界販売本数1000万本を突破した。30年以上も愛されるゲームの魅力とはなにか? なぜ人は「ゼルダの伝説」にハマるのか? ユーザー体験(UX)の観点からひも解いていく。 - iPhoneの「りんごマーク」 なぜ、真ん中ではなく上に? 知られざる人間の心理
なぜiPhoneの「りんごマーク」は真ん中ではなく、少し上のほうにプリントされているのだろうか? そこにはブランドに対する納得感を生む工夫が施されていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.