「ゼルダ」実写化に見る、任天堂IP戦略の“理想像”とは:エンタメ×ビジネスを科学する(3/3 ページ)
任天堂が『ゼルダの伝説』を実写映画化する。最近ゲーム以外へのIP活用の動きが目立つ任天堂だが、そこにはある「理想像」があるはずだ。
「ポケモン」ブランドを意識?
ただし、このような取り組みは決して任天堂が初めてではない。ゲームが発端であり、新規層への入り口を広げ、世界のトップオブトップに立っている日本発のIPがある。それがポケモンだ。
1996年に任天堂がパブリッシャーとなった「ポケットモンスター」から始まったゲームシリーズは、その後アニメや映画、カードゲームやグッズなどに展開し、世界的な社会現象となり、常にその時代の子どもたち(=新規層)の心をつかみ続けている。
2016年にはスマートフォン向けに「Pokemon GO」をリリースし大ヒット。老若男女問わず、まだゲーム機に触れたことのない人々がポケモンというIPに触れ、その世界観を体験できるようになっているのだ。
ポケモン社は、ポケモンというコンテンツを永続的なブランドに育てることを目的とし、23年には睡眠をテーマとした「Pokemon Sleep」を開始するなど、新たな試みを続けている。
任天堂の君島達己前社長と古川俊太郎社長ともに、社長就任前にこのポケモン社の取締役を経験していることは、二代にわたって推し進める「任天堂IPに触れる人口を拡大する戦略」につながっている。
※株式会社ポケモン:任天堂、ゲームフリーク、クリーチャーズの3社の共同出資により設立されたポケモンセンター株式会社が前身。2000年に現社名に変更し、ポケモン関連のライセンス関連事業を開始する。(2000年までは任天堂がポケモンライセンス関連事業を行っていた)
任天堂IPに触れる人口を拡大する戦略により、マリオやゼルダもポケモンと同様に、今後はより広い顧客層・新規層へアプローチすることが期待される。今はまだ「マリオやゼルダはゲーム」と認識されているが、近い将来、媒体やチャネルから独立した地位を築き、多くの新規層を主力事業であるゲームに招き入れるブランドになっていくだろう。
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