「最近の若者は……」と突き放す上司は淘汰される、これだけの理由:働き方の「今」を知る(5/5 ページ)
上司と部下はいつの世代も分かり合えないのが世の常だ。しかし「若者世代はよく分からない」といって、部下とのコミュニケーションを放置するような上司や先輩は、どんどん淘汰されていく可能性が高い。なぜかというと……。
日本人を取り囲む、働く現状はどうなっている?
では、一方の労働環境はどのように変化しているのだろうか。
企業目線から見れば、モノはある程度充足しているので、よほどの付加価値か新たな切り口を提案できない限りは売れない。また、人件費も最低賃金も上がり続けているため、おいそれと残業もさせられない状況となっている。
共働き家庭も当たり前となり、1997年には既に専業主婦家庭を割合で逆転している。ただ一方で、高齢化による介護の必要性などから、育児や介護等の理由でフルタイム労働が難しい人の割合も増え、介護を理由にした年間離職者数は約10万人にも上っている。
かつて人口増加・高度成長期にうまく機能していた「終身雇用」「年功序列」「滅私奉公」といったシステムは、現在の人口減少・低成長期に全く合致していない。それなのに無理やり使い続け、不具合が生じている状態なのだ。
だからこそ、これからの会社組織は人手不足であっても、人件費が高い状況でも、育児や介護などでフルタイム労働が難しい人ばかりの状況でも、難なく乗り越えられる経営が求められるのである。
そのためには、まっとうな給料を支払えるだけの利益を生み出すビジネスを運営し、もうからないビジネスや利益につながらない無駄な仕事はキッパリと止めるか、利益が出るように改革するという決断が必要だ。「何事も残業でカバーする」という悪習を見直し、仕事を棚卸しし、ムダやムリ、ムラを見直して、短時間で効率的に仕事をこなせる人を正当に評価する──といった手立ても求められる。これこそ、この数年盛んに「働き方改革」が議論されている要因なのである。
著者プロフィール・新田龍(にったりょう)
働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役
早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。「労働環境改善による業績および従業員エンゲージメント向上支援」「ビジネスと労務関連のトラブル解決支援」「炎上予防とレピュテーション改善支援」を手掛ける。各種メディアで労働問題、ハラスメント、炎上トラブルについてコメント。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。
著書に『ワタミの失敗〜「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』(KADOKAWA)、『問題社員の正しい辞めさせ方』(リチェンジ)他多数。最新刊『炎上回避マニュアル』(徳間書店)、最新監修書『令和版 新社会人が本当に知りたいビジネスマナー大全』(KADOKAWA)発売中。
11月22日に新刊『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)発売。
著者新刊『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
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